ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ソニー・ロリンズ/ブラス・アンド・トリオ

2024-11-17 21:38:28 | ジャズ(ビッグバンド)

本日はソニー・ロリンズの珍しいビッグバンド作品をご紹介します。原盤は「ソニー・ロリンズ・アンド・ザ・ビッグ・ブラス」と言い、MGM傘下のメトロジャズと言うマイナーレーベルからリリースされましたが、後にヴァーヴ・レコードが買い取り「ブラス・アンド・トリオ」の名でリイシューしました。その後CDで再発売されたのはヴァーヴ盤で、私の手元にあるのもそちらの方です。録音年月日は1958年7月。ロリンズが活動を休止し、3年間の充電期間に入る半年前の作品ですね。

さて、「ブラス・アンド・トリオ」の名前の通り、本作にはビッグバンド編成の4曲だけでなく、ピアノレスのトリオ編成の曲も4曲含まれています。ロリンズは前年1957年のコンテンポラリー盤「ウェイ・アウト・ウェスト」を皮切りに、ブルーノート盤「ア・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」、リヴァーサイド盤「フリーダム・スイート」とトリオ作品を立て続けに発表していた頃で、本作もその一環と言えます。トリオで相棒を務めるのはヘンリー・グライムス(ベース)とスペックス・ライト(ドラム)です。 

一方、ビッグバンドの方はナット・アダレイ(コルネット)、クラーク・テリー、アーニー・ロイヤル、ルノー・ジョーンズ(トランペット)、ビリー・バイヤース、ジミー・クリーヴランド、フランク・リハック(トロンボーン)、ドン・バターフィールド(チューバ)の計8名から成るブラスセクションにベルギー出身のルネ・トマ(ギター)、ディック・カッツ(ピアノ)、ヘンリー・グライムス(ベース)、ロイ・ヘインズ(ドラム)が加わった布陣。アレンジを手掛けるのはベイシー楽団出身の黒人アレンジャー、アーニー・ウィルキンスです。

全8曲、前半4曲がビッグバンド、後半4曲がピアノレストリオです。オープニングトラックはジョージ・ガーシュウィンの”Who Cares”。アーニー・ウィルキンスのシャープなビッグバンドアレンジに乗ってロリンズがメロディアスなソロを展開します。途中で挟まれるルネ・トマとディック・カッツのソロも良いですね。続く”Love Is A Simple Thing”も歌モノでキャッチーな感じです。3曲目”Grand Street”はロリンズのオリジナルで、やや歌謡曲っぽい独特のメロディが印象的。後にデイヴ・ベイリーやシャーリー・スコットらもカバーした名曲です。この曲ではナット・アダレイのソロも聴けます。4曲目”Far Out East”はアーニー・ウィルキンスのオリジナルでこちらもホーンアレンジがカッコいいですね。

一方、ピアノレストリオの方は全て歌モノで”What’s My Name""If You Were The Only Girl In The World""Manhattan"と言った曲でロリンズが思う存分にソロを吹きまくります。ただ、個人的にはどうもピアノレス作品ってのは馴染めませんね。後年の「橋」あたりはギターが入っていてリズム楽器の役割を果たしているのですが、ベースとドラムだけではちょっと物足りない。ラストの”Body And Soul”に至っては無伴奏テナーソロで当時のロリンズの求道者的な一面が良く出ています。評論家によってはピアノレスこそロリンズの真骨頂と評価する人もいますが、そこは好みの問題でしょうか?私は断然ビッグバンドの方をおススメします。

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テディ・キング/ナウ・イン・ヴォーグ

2024-11-16 16:41:21 | ジャズ(ヴォーカル)

本日は白人女性ヴォーカルのテディ・キングをご紹介します。お世辞にもメジャーな存在とは言えませんが、50年代にストーリーヴィルやRCAに作品を残しており、今日取り上げる「ナウ・イン・ヴォーグ」もそのうちの1枚です。確かジャッキー&ロイのストーリーヴィル盤を購入した時に一緒に買ったと記憶しています。19世紀風のドレスを着た貴婦人らしき人がジャケットに描かれていますが、この人がテディ・キングと言うわけではなく、テディ自身はショートヘアのボーイッシュな感じの女性です。それにしてもこの謎の貴婦人、前髪がクセ強過ぎ!

さて、私が本作に興味を持ったきっかけは共演陣の顔ぶれ。基本がボブ・ブルックマイヤー(ヴァルヴトロンボーン)、ビリー・テイラー(ピアノ)、ミルト・ヒントン(ベース)、オシー・ジョンソン(ドラム)と言う渋好みのメンツから成るカルテットで、4曲でニック・トラヴィス(トランペット)、ジーン・クイル(アルト)、ソル・シュリンジャー(バリトン)が加わります。個人的にはフィル&クイルのジーン・クイルに注目したいところですが、彼がソロを取る場面はほぼなく、ソロで目立つのはボブ・ブルックマイヤーとビリー・テイラーです。

アルバムはロジャース&ハート作曲の"Why Do You Suppose"で始まります。他では聞いたことがない曲ですが、なかなかキャッチーな佳曲でニック・トラヴィスとブルックマイヤーのソロを挟みながらテディがスインギーに歌います。彼女のヴォーカルはかなり個性的で、やや鼻にかかった声でアップテンポではキュートに歌う一方、バラードでは高音で伸びのある歌声を響かせます。歌詞も一語一語はっきり発音する感じですね。

続く"Over The Rainbow""This Is Always"は定番のバラードで、テディがしっとりと歌い上げます。他にも何曲かバラードがありますが、私的には8曲目"Something To Live For"と10曲目の"Old Folks"がなかなかの名唱だと思います。ミディアム〜アップテンポでは"Fools Fall In Love""You Hit The Spot"と言った他ではあまり聞いたことのない曲を軽やかに歌います。共演陣では上述のとおりボブ・ブルックマイヤーが大活躍します。彼のトロンボーンはヴァルヴ式でスライド式のような迫力はない代わりに、独特のくぐもった音色で温かみを感じさせますよね。隠れた名手ビリー・テイラーもソロにバッキングに堅実なサポートぶりです。

 

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ジョニー・ハートマン/アイ・ジャスト・ドロップド・バイ・トゥ・セイ・ヘロー

2024-11-14 21:15:58 | ジャズ(ヴォーカル)

前回ご紹介したサラ・ヴォーンに代表されるように黒人女性ヴォーカルはビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエ、ダイナ・ワシントン、ナンシー・ウィルソンと人気歌手がたくさんいます。ただ、これが黒人男性となると意外と人材が少ないですよね。一般的に有名なのはナット・キング・コールと本職はトランぺッターですがルイ・アームストロングぐらいでしょうか?

今日ご紹介するジョニー・ハートマンも決してメジャーとまでは行きませんが比較的名前は知られている方ですね。理由は何と言っても「ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン」の存在でしょう。黄金のコルトレーン・カルテットとハートマンの共演作で、前衛的な演奏の多いインパルス時代のコルトレーンの中では「バラード」と並んで比較的聴きやすい作品として昔からジャズファンの間で人気があります。今日取り上げる「アイ・ジャスト・ドロップド・バイ~」はコルトレーンとの共演の半年後の1963年10月に同じインパルスに残された1枚で、50年代のベツレヘム時代の作品群と合わせてハートマンの代表作に挙げられる1枚です。

メンバーはイリノイ・ジャケー(テナー)、ケニー・バレルまたはジム・ホール(ギター)、ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ミルト・ヒントン(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)と言った顔ぶれ。基本的にはハートマンの声が主役で各楽器は脇役に徹していますが、イリノイ・ジャケーとハンク・ジョーンズが随所で短いソロを聴かせてくれます。

全11曲。基本的にはバラード中心の選曲です。"In The Wee Small Hours Of The Morning""Stairway To The Stars"と言った定番スタンダードもありますが、どちらかと言うとそれ以外の曲の方が良いですね。映画音楽の巨匠ヘンリー・マンシーニがオードリー・ヘプバーン主演の映画のために書き下ろした"Charade"、デューク・エリントンの隠れた名曲"Don't You Know I Care"の他、"If I'm Lucky""I Just Dropped By To Say Hello"と言ったあまり知られていないバラードをハートマンが独特のバリトンヴォイスで語りかけるようにじっくり歌い上げていきます。イリノイ・ジャケーのテナーも素晴らしく、随所で挟まれるソロ以外にも太い音色のオブリガートでバラードに彩りを加えます。ちょっと下世話なまでにムードたっぷりのテナーがハートマンの重低音ヴォイスとよく合いますね。

バラード以外は元々はシャンソンの”Kiss And Run”、ピアニストのロンネル・ブライト書き下ろしの”Don’t Call It Love"、ラストトラックの”How Sweet It Is To Be In Love”とこちらもマイナーな曲揃いですが、ミディアムテンポの曲をハートマンがスインギーに歌い上げます。これらの曲ではハンク・ジョーンズも軽やかなタッチのピアノソロを披露し、演奏を盛り上げます。以上、大人の男の色気がムンムン漂うヴォーカル作品です。

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サラ・ヴォーン・イン・ザ・ランド・オヴ・ハイファイ

2024-11-13 18:45:13 | ジャズ(ヴォーカル)

本日は3大黒人女性ヴォーカルの1人、サラ・ヴォーンを取り上げます。1955年10月にマーキュリー傘下のエマーシー・レコードに吹き込まれた1枚ですね。サラのエマーシー盤と言えば一般的には前年のクリフォード・ブラウンとの共演盤が有名ですが、本作も内容的には遜色のない出来と思います。「イン・ザ・ランド・オヴ・ハイファイ」と言うタイトルが少し変わっていますが、当時はちょうど録音技術が進化して原音により忠実なハイファイ(High Fidelity)録音が普及し始めた頃で、本作以外にも様々なアーティストが「~イン・ハイファイ」と言うタイトルのアルバムを出しています。

メンバーですが、合計7名の管楽器奏者を加えたミニ・ビッグバンド編成で、トロンボーンのジェイ&カイやテナー兼フルートのジェローム・リチャードソンらも参加していますが、彼らはアンサンブル要員です。大きくフィーチャーされているのがキャノンボール・アダレイのアルトで、多くの曲で彼にソロの出番が与えられています。キャノンボールは同年にエマーシーと契約したばかりで、クリフォード・ブラウンとともに同レーベル期待の若手として将来を嘱望されていました。本レコードはサラとともにキャノンボールを売り出す意図もあったと推測されます。なお、リズムセクションはターク・ヴァン・レイク(リズムギター)、ジミー・ジョーンズ(ピアノ)、ジョー・ベンジャミン(ベース)、ロイ・ヘインズ(ドラム)、アレンジャーはベイシー楽団出身のアーニー・ウィルキンスです。

全12曲。うち半分ぐらいは定番スタンダード曲ですが、サラの抜群の声量と表現力に裏打ちされたヴォーカルとキャノンボールの元気いっぱいのアルト+豪華ビッグバンドの伴奏のおかげで新たな生命を吹き込まれています。中でもおススメは”Cherokee"。爆発するホーンセクションをバックにサラがノリに乗って歌い、中間部ではキャノンボールもパワフルなソロを披露します。この曲はクリフォード・ブラウンはじめインストゥルメンタルで演奏されることが多いですが、歌バージョンでは本作がベストではないかと思います。一転してバラードを甘美に歌い上げる”I'll Never Smile Again"、中間部でサラのスキャットとキャノンボールのアルトがスリリングな掛け合いを見せる”How High The Moon"、フレディ・グリーン風のリズムギターに乗せてサラがスインギーに歌う”Sometimes I'm Happy"も充実の出来です。

定番曲以外ではベイシー楽団を思わせるブルージーなサウンドに乗せてキャノンボールのファンキーなアルトソロもフィーチャーされる”Don't Be On The Outside"、美しいバラードの”It Shouldn't Happen To A Dream"、パワフルなホーンアレンジが施されたキャッチーな”An Occasional Man"、フルートが奏でるラテン調の妖しいムードの中サラがドスの利いたヴォーカルを聴かせる”Oh My"も聴きモノです。

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ジョー・スタッフォード/ジョー・プラス・ジャズ

2024-11-11 21:09:31 | ジャズ(ヴォーカル)

ロックが登場する1950年代以前、アメリカのエンターテイメントの世界は今ほど明確にジャンル分けがされていませんした。当時主流だったのはいわゆるトラディショナル・ポップで、ブロードウェイやハリウッド映画のための音楽をコール・ポーター、アーヴィング・バーリン、ジェローム・カーンと言ったティン・パン・アレイの作曲家達が書き、それを人気歌手が歌うというスタイルでした。歌手たちはまた映画やテレビショーにも出演し、まさに何でもマルチにこなす総合的エンターテイナーでした。

代表的なのは男性だとフランク・シナトラ、ビング・クロスビー、ディーン・マーティン、ペリー・コモ、黒人のサミー・デイヴィス・ジュニア、女性だとローズマリー・クルーニー、ドリス・デイ、ダイナ・ショア、そして今日ご紹介するジョー・スタッフォードあたりが代表的な存在ですね。彼らが歌っているのはポップスなのか?それともジャズなのか?ビッグバンドやストリングスをバックにスタンダードを歌うという点では一緒とも言えますし、明確な線引きがあるわけではないです。ただ、50年代後半になるとポップスがロックやR&Bの要素を取り入れて複雑化して行くにつれ、だんだん差別化されて行きます。たとえばアニタ・オデイやクリス・コナー、ジューン・クリスティはジャズシンガーであってポップシンガーと呼ぶことはないですし、逆にコニー・フランシスやブレンダ・リーらのポップスターをジャズに含めることはありません。

今日ご紹介するジョー・スタッフォードはどちらかと言うとポップ・シンガーの括りに入れられることが多いですが、本作はタイトルにわざわざ「ジョー・プラス・ジャズ」と強調しているだけあって一流ジャズメンを多数起用したジャズ色の濃い内容です。そのメンバーたるや凄いですよ。中核となるのは新旧のデューク・エリントン楽団員と西海岸で活躍していたスタジオミュージシャン達で、前者がベン・ウェブスター(テナー)、ジョニー・ホッジス(アルト)、ハリー・カーニー(バリトン)、ローレンス・ブラウン(トロンボーン)、レイ・ナンス(トランペット)、後者がコンテ・カンドリ&ドン・ファガーキスト(トランペット)、ジミー・ロウルズ(ピアノ)、ジョー・モンドラゴン(ベース)、メル・ルイス(ドラム)と言った豪華な顔ぶれ。指揮するのはジョニー・マンデルです。ちなみに発売元は大手コロンビア・レコード、録音は1960年8月です。

全12曲。おなじみのスタンダード曲をジョーがじっくり歌い上げて行きます。やや低めのどっしりした声ですが、クリス・コナーらのようなハスキーヴォイスではなく、艶もある感じです。ポップスというとジャズより格下に見る方もいるかもしれませんが、それはとんでもない偏見で基本的にトラディショナル・ポップの歌手は皆歌が上手いです。本作はそれに加えて共演するジャズメンの演奏が素晴らしく、とりわけベン・ウェブスターがほとんどの曲でソロにオブリガートにと大活躍し、彼も陰の主役と言って良いでしょう。とりわけバラードでのふくよかで温かみのあるテナーの音色は絶品ですね。

どの曲も水準以上の出来ですが、中でもおススメがジョニー・ホッジスのアルトをバックにジョーが堂々と歌うオープニングトラック”Just Squeeze Me"、ベンのテナー&ドン・ファガーキストのミュートトランペットの伴奏を受けジョーが情感たっぷりに歌う”Midnight Sun"、ラス・フリーマンのチェレステが印象的なバラード"The Folks Who Live On The Hill”、ミディアムテンポのスインガーでベンのテナーソロも堪能できる"What Can I Say After I Say I'm Sorry"、ベンとコンテ・カンドリのソロをフィーチャーした"S'Posin'"等です。「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」のバージョンがあまりにも有名な”You'd Be So Nice To Come Home To"も本作のバージョンも負けず劣らず素晴らしく、ジョーの伸びのあるヴォーカルの合間にジミー・ロウルズ、ベン、コンテ・カンドリのソロも彩りを添えます。以上、曲よし歌よし伴奏よしの理想的なヴォーカル名盤です。

 

 

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