本日はズート・シムズの英国ロンドンでのライヴ盤をご紹介します。1961年11月にフォンタナ・レコードに吹き込まれたもので、収録されたのは”ロニー・スコット・クラブ”。英国を代表するテナー奏者であるロニー・スコットがオーナーを務めるジャズクラブで、タビー・ヘイズの名盤「ダウン・イン・ザ・ヴィレッジ」と同じ場所です。共演メンバーはスタン・トレイシー(ピアノ)、ケニー・ナッパー(ベース)、ジャッキー・ドゥーガン(ドラム)。全員が地元イギリスのジャズマン達です。トレイシーやドゥーガンのことは良く知りませんが、ケニー・ナッパーは以前取り上げたジャズ・クーリアーズ「ザ・ラスト・ワード」にも参加していました。ジャケットのセンスはトホホって感じですが、一応「クッキン!」なのでお玉(レードル?)を腰にぶら下げているのでしょうか?60年代っぽいと言えばぽいですが・・・
ただ、内容の方は悪くないです。全6曲、うち5曲はスタンダードで、”Stompin' At The Savoy""Love For Sale""Somebody Loves Me""Gone With The Wind""Autumn Leaves”と言ったお馴染みの曲ばかり。並のジャズマンの手にかかればベタなマンネリの演奏になってしまうところですが、ズートの絶好調のプレイのおかげで聴き応えのある作品に仕上がっています。ズートのアドリブは決して原曲のメロディを大きく逸脱することなく、軽く崩しているだけのように聴こえるのですが、その崩しの加減が絶妙で、なおかつ彼特有のアーシーな「コク」のようなものが感じられます。共演陣ではスタン・トレイシーがパーカッシヴで意外と力強いピアノを、ジャッキー・ドゥーガンも”Somebody Loves Me”等で派手なドラミングを披露してくれます。なお、ラストの”Desperation”だけはオリジナル曲で英国を代表するトランぺッター、ジミー・デューカーの作。デューカーとクラブのオーナーであるロニー・スコットも参加しています。ロニー→デューカー→トレイシーが力強いソロを取った後、満を持してズートが貫録のソロで演奏を締めくくります。