広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

船川、上/下北手の読み

2011-01-22 20:11:39 | 秋田の地理
秋田朝日放送(AAB)が土曜朝に放送しているローカル情報番組「サタナビっ!」。
秋田出身の出演者が多く親しみが持て、扱う内容が幅広くておもしろいが、その中に「サタナビっ!調査班」という、視聴者から寄せられた日常の疑問を調査するコーナーがある。
今日放送分の「調査班」は、とても勉強になったので、「秋田の地理」カテゴリーとして当ブログでも取り上げさせてもらいます。


今日の視聴者からの調査依頼は「男鹿市に「脇本脇本字脇本」という住所があります。どうして3回も「脇本」がつくのでしょうか?(番組公式サイトより引用)」というもの。

僕もそういう住所というか地名が存在するのは知っていた。
高校の時、学校で配られたクラス名簿(今は個人情報保護でないだろうな)に、男鹿から来ている人(男鹿市から秋田市内の高校に通う生徒は多い)の住所が「男鹿市脇本脇本字脇本」とあり、驚いたのが最初だった。

番組では、男鹿市役所に行ったが、古いことで正確なことは分からなかったが、1889(明治22年)の町村制施行時から既に今の地名だったのだとか。「愛着のある地名を残していくため。」と結論づけていた。

以下、Wikipediaなどで調べたのだが、
1889年にできた脇本村は、1954年の昭和の大合併で男鹿市になっている。
平成の大合併でもそうだが、合併前の市町村名が、合併後の町名(大字など)として残ることも多い。(河辺郡雄和町妙法→秋田市雄和妙法のように)
昭和の合併の男鹿市でも同様で、「船川港◯◯」「五里合◯◯」など合併前の町村名(船川港町、五里合村等)が頭につく大字がとても多い。脇本地区には「脇本浦田」など、6つの大字があるようで、その1つが「脇本脇本」。「脇本 - 脇本」と分割するのでなく、「脇本脇本」と2回繰り返したものが1つの大字ということになる。

村時代は「脇本村の脇本地区の字脇本」だったのだが、男鹿市発足時に「男鹿市の脇本脇本地区の字脇本」になったわけで、「脇本の中の脇本、さらにその中の脇本」を意味する地名といえる。

スタジオでは、男鹿市には他にも同じような地名があるとして、「北浦北浦字北浦」や「戸賀戸賀字戸賀」などを簡単に紹介していた。


繰り返す地名の話はいいとして、僕が感心したのは、いちばん最後に触れていた。
船川港船川字船川」の読み方

上記の他の男鹿市の地名同様、「旧船川港町の中の船川地区の中の字船川」、つまり「船川港船川地区の字船川」という意味なのは想像がつく。
大字の船川港船川地区は、今でも男鹿市の中心(人口や商業施設ではそうとは限らないかもしれない)で、市役所やJR男鹿駅、重要港湾の船川港などがある。
一般的には単に「船川」といえば、これらがある「船川港船川」を指すことが多いと思う。

僕は以前から、この「船川」の「川」の読み方が気になっていた。
多くの人は「フナワ」と濁音(点を付けて)で発音する。しかし、一部には「フナワ」と清音で発音する人もいる。
点を付けない人の中には、地元の人や地元放送局のアナウンサーもいたので、ひょっとしたら実は「フナカワ」が正しいのかも、と考えていた。


番組によれば、「船川港船川字船川」は
ふなわみなとふなわ あざふななのだそうだ。
大字は「フナガワ」と濁って、小字は濁らない「フナカワ」なんだ!
これは衝撃的事実!!
むしろこうなった由来を調べてほしかった…


ついでに調べてみると、市役所の裏、「船川港船川字漆畑」にある、男鹿市立船川第一小学校の公式サイトの学校紹介のページには「(ふなわだいいちしょうがっこう)」と読み方が出ている。
船川港船川地区の学校だから濁音なんだろう。

そして、(地名、町名でなく)港湾としての「船川港」は、Wikipediaには「(ふなかわこう、ふながわこう)」と両方の読みが出ているのだが…
船川港の管理・運営は秋田県が行っているようだが、各種取り締まりや税関業務は海上保安庁など国土交通省が行っている。
秋田市土崎港の「ポートタワー・セリオン」そばに、「(国の)秋田港湾合同庁舎」がある。(隣に秋田県の「秋田港湾事務所」があって紛らわしいのだけど。=この記事参照)
秋田港湾合同庁舎(以前撮影していた写真)

国の合同庁舎に入っている機関
「秋田船川~」という名のものが多い。「秋田港(土崎の港)」と「船川港」を一体的に扱っているのだろうか。
ローマ字はすべて「FUNAKAWA」なので、港湾の「船川港」は正式には(少なくとも国土交通省内では)濁らない「ふなわこう」だと思われる。


以上から、厳密には(=理屈では)「フナガワ」といえば広範囲(「船川港船川」もしくはそれを含む「船川港◯◯」各地区)な地域を指し、「フナカワ」といえば「船川港船川字船川」の小字一帯のみか港湾としての「船川港」を指すことになる。


濁るかどうかで迷う地名といえば、秋田市にもある。
秋田駅の東~南東部にある「上北手」「下北手」地区の「手」。
両地区は1954年の昭和の大合併で、上北手・下北手両村が秋田市に編入されてできた大字。現在は独立した住居表示になった「横森」「桜」「桜ガ丘」などの一帯、さらに御所野地区の一部も元は両村だったらしく、かなり広かったようだ。

古くから秋田市に住む人は「かみきた/しもきた」と濁音になることが多いが、「かみきた/しもきた」と濁らない人やケースも多い。
僕は小学校3年生の社会科で使った市教委発行の副読本「わたしたちの秋田市(だったか?)」やその副教材などで「て」とルビが振られているのを初めて見て、戸惑った記憶がある。
どちらを使う人がどのくらいか割合は分からないが、公的な場面では濁らない方が多い気がする。どちらが正しいのだろう。

今回も、秋田市役所 地域振興部 地域振興課サイト内の「地名小辞典」を見た。
そこでは「シモキタテ/カミキタテ」と読みが記載されているので、やはり公式には清音なのだろうか。

念のため、両地区にある市立小学校の公式サイトを見てみた。両小学校ともローマ字で学校名を表記している。
「Simokitate Elementary School」
うん。やはり「しもきた」。一方、
「KAMIKITADE ELEMENTARY SCHOOL」
あれ!? 「かみきた」!

秋田市道にある道案内の標識
市道だから秋田市が設置した標識のはず。他の場所は確認しておらず、この1枚しか知らないが、これは「Kamikitade=かみきた」と濁音。
以上のように秋田市関係の機関だけでも、バラつきがみられた。


では、他の組織はどうか。
まず、村だった当時は、役場・学校と並ぶ村の中心的存在だったであろう郵便局。民営化された今も上北手郵便局(ATMはない模様)と下北手簡易郵便局がある。
日本郵政のサイトの「郵便局・ATMをさがす」ページの検索結果では、「 (かみきたゆうびんきょく)」「(しもきたかんいゆうびんきょく)」と読みが記載されている。
郵便局は濁音か

次に幼稚園や保育所。両地区には私立の園が1つずつある。
秋田市の山間部の一部地域には「幼児園」というのがある。保育所や幼稚園とは別の「へき地保育所」というもののようで、行政や法人でなく、各地域で運営するものらしい。
上北手にも「上北手幼児園」があったが、地区の宅地化が進んだことなどを受けて、2006年に社会福祉法人を立ち上げ、幼児園を母体にして認可保育所の「上北手保育園」が発足している。
つまり、地元住民が関わってできた、地域に密着した保育園と考えられるが、その公式サイトのURL(アドレス)は、「….kamikitadehoikuen.…」とやっぱり濁音。

また、下北手地区の下北手幼稚園のサイトには「Shimokitade,Youchien」とあり、これも濁音。
地元の人はやはり「で」なのだろうか。

大した問題ではないだろうけど、統一感に欠けるのが気になります。

【2012年7月11日追記】そういえば、弘前市にも統一されていない読みの地名があった。この記事下のほうで取り上げている「和徳」。
公式には「わとく」らしいが、「わっとく」とされる場合もある。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする