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神田笹岡線廃止

2011-01-04 23:20:17 | 秋田のいろいろ
秋田市役所 都市整備部都市計画課 交通政策室のサイトによれば、昨年12月24日に開催された「第4回秋田市地域公共交通協議会バス路線再生分科会」において、秋田市内のバス路線「神田笹岡線」の廃止の意向の申し出が運行会社からあり、その代替交通の業務委託先の募集(公募型プロポーザル)を行うことが決まったようだ。

「神田笹岡線」は今年3月末で廃止され、4月1日から秋田市が運行する(実際の運行は民間に委託。既に他の郊外地域で実施中)「秋田市マイタウン・バス笹岡線」として運行される予定。
廃止されるのは「神田笹岡線」だけであり、本数が多い「神田旭野線」などは廃止されませんので、念のため。


略図
神田笹岡線は、上の図の赤いライン、
 秋田駅西口-通町-菊谷小路-天徳寺前-笹岡入口-笹岡-組合病院-自衛隊前-土崎駅
というルートで、平日は3往復、土日祝日は土崎駅行き3本、秋田駅行き1本が運行されている。旧秋田市交通局から譲渡された路線。


ちょっと話がそれますが、ここで「神田線」というバス路線について。
「神田線」は、現在はいちおう(時刻表上など)「神田土崎線」と「神田旭野線」に区分されている。基本的に行き先が違うだけで、経路は同じ。上の図の青いライン。
神田土崎線は、
  秋田駅西口-通町-菊谷小路-天徳寺前-笹岡入口-神田-八柳・卸売市場入口-外旭川病院前-向山-土崎駅
神田旭野線は、
  秋田駅西口-通町-菊谷小路-天徳寺前-笹岡入口-神田-八柳・卸売市場入口-外旭川病院前-旭野団地-外旭川市営住宅前(一部は組合病院)
というルート。

秋田市広報紙「広報あきた」バックナンバーによれば、
1954(昭和29)年2月1日に秋田市営バス神田線が運行開始。
外旭川(そとあさひかわ)地区は、当時はまだ「南秋田郡外旭川村」であり、この年10月1日に秋田市に編入された。
広報第54号によれば「手形方面を通り-鉱山学部前-手形球場前-田中-如斯亭前-泉-天徳寺前-神田-…」とあり、当初は通町~菊谷小路~桜町(←当時は桜町ではなく「泉反町」などだったらしい)でなく、線路の反対側の手形~旭川地区を通る経路だったらしい。
天徳寺地下道がまだ開通していなかったための措置ではないかと思われる。いつから現経路になったかは不明だが、地下道が開通したのは昭和30年代。

神田線は初めは、秋田駅と土崎駅を結ぶ便を中心に運行されていた。
1979年5月の広報第776号に「秋田~土崎間を結ぶ市営バス四ルートのひとつです。」と紹介されている。(他の3路線は県庁寺内経由、新国道経由と臨海バイパス経由?)

その後、外旭川地区の宅地化が進んだことや運行効率化のためだろう、途中の外旭川地区のバス停(天徳寺前、斎場前、八柳二区など)を始発/終点とする便ができた。
1976年12月には天徳寺前発着便を延長して卸売市場発着(【5日補足】現在の「卸売市場入口」ではなく、市場内に入っていたはず)便が登場しているほか、いつからかは分からない(1981年にはまだなかった)が、外旭川市営住宅前(卸売市場や八柳二区発着を発展的解消したものか?)を発着するものが登場し「旭野団地」行きと呼ばれ(市営住宅前の1つ手前が旭野団地)、神田線の主流となった。

かつては1時間に1本あった土崎駅行きの神田線も、減便や旭野団地止まりに短縮され、市営バス時代末期には、朝夕などに数本運行される程度になった。

他には、
1980年 ワンマン化(それ以前は車掌が乗っていたわけだ)
2000年 秋田組合総合病院の移転に伴い、外旭川市営住宅発着の一部を病院発着に変更(当時は市営住宅を通らずに組合病院に向かっていたが、数年前に両方を通るように再度変更された)
2005年 交通局から民間バス会社へ移管
以上が笹岡線を除く、神田線の歴史。


肝心の神田笹岡線は、神田土崎線の派生系統という位置づけなのだけど、そもそも、「“神田”笹岡線」と名乗りながら、「神田」のバス停は通らない。1つ手前の「笹岡入口」で別ルートに入る。
田んぼの中を突っ切り、笹岡の集落に立ち寄り、転回場で向きを変え、少し戻って組合病院に寄り、土崎駅へ向かう。

歴史をさかのぼって1979年7月の広報781号には
「(笹岡線は)市電が秋田~土崎間を走っていたころ、土崎終点の電車停留所(港中央一丁目)から外旭川笹岡までを結び、地域の人びとの便をはかったのがはじまりです。
今でも同じ港中央一丁目から出発し、笹岡まで土崎の商店街、病院が集まっている中央四丁目、国鉄土崎工場、自衛隊前、四ツ谷団地の経路で運行しています。
土崎に通院するかたや外旭川小に通学する子どもたちに、頼りにされています。」とあり、日中にほぼ1時間ごとに運行されていたようだ。

当初は単に「笹岡線」という名称で、土崎港地区と笹岡・笹岡入口を結ぶ路線だったのだ。
1980年からは、通学時間帯はサンパーク団地経由で運行するようになった。
サンパーク団地は、現在は飯島南小学校の学区だと思うが、同校は1986年開校。それ以前は、田んぼの中を抜けて笹岡線で外旭川小学校へ通っていたのだろうか。

そして1988年の春から、既存の笹岡線に笹岡入口~秋田駅前間を延長して、秋田駅発着の「神田笹岡線」となった。
記憶によれば、当時の運行本数は現在とほぼ同じで、サンパーク団地を経由していた。
市営バス時代の神田笹岡線(以下同)
その後、組合病院移転に伴い、サンパーク経由をやめて、病院経由に変わったようだ。


交通政策室のサイトの会議資料(バス会社から県への申出書)によれば、
経路の殆どを他系統と重複しており、単独運行部分は「天徳院前」、「笹岡」の二つのバス停のみ」「この二つのバス停の利用者は極めて少なく
笹岡回転地を有償で借地使用しており、費用は掛り増しの状況」という。
添付資料のこの2つのバス停の利用者数は、1ダイヤ当たり平均0~0.44人。
(「天徳院前」の近くに「天徳院ニュータウン前」とかいうバス停もあったような気がするけどどうだったっけ? 片道だけだったか?)

なるほど。言われてみれば、秋田駅~笹岡入口は通常の神田線と、組合病院~土崎駅は土崎駅発着の「組合病院線」とそれぞれ重複しているので、神田笹岡線単独の運行区間は、笹岡入口~組合病院間だけということになる。
単独運行区間は、ほとんどが田んぼの中の道なので沿線の住宅は笹岡集落のみ、わずかな本数のために回転地を借りるのも大変だろう。実際にこの乗降数では儲からないのも無理はない。
外旭川笹岡地区の皆さんの意向を充分に汲めば、廃止はやむを得ないと思う。

ただし、笹岡以外の外旭川地区などから組合病院へは旭野団地線が利用できるから問題ないとして、外旭川地区などから自衛隊・土崎方面へ向かう人には、2度の乗り換え・初乗り運賃の重複支払いが生じてしまうことになる。そんな人がどのくらいいるのか分からないが、いるとすればその救済があるのだろうか。
雪の田んぼを行く

公募型プロポーザルの仕様書(住民と協議中のため変更の場合あり)によれば、代替交通の運行区間は組合病院前~神田までの4.8キロで定員10人程度のジャンボタクシー車両を用いる。「定時定路運行」とあるので予約制ではなく、毎日必ず運行されるようだ。ダイヤは平日3往復、土日祝日2往復。
外旭川側の発着点が笹岡入口でなくなり、反対方向の外旭川小学校前にある「神田」バス停に変わることになる。
【9日追記】6日に市のサイトに追加でアップされた「議事要旨」によれば、「笹岡入口」発でなく「神田」発にしたのは、神田には待合所(っていうか屋根付きベンチかな。笹岡入口はポールだけ)があるためだという。道幅やカーブの点からも、笹岡入口で待機するには問題があると思うし、納得。ただ、秋田駅方面から神田線で来て乗り継ぐ場合、その運賃は笹岡入口より神田の方が高くなる。
秋の日暮れ

ところで、秋田市交通局の廃止から、この3月で丸5年。
5年間で秋田市の路線バスを中心とする公共交通は、少なくとも進歩したとは言えない状況だと思う。
これからも機会を見て、バス事情について取り上げていきたい。

※笹岡線について続きはこちら


【2014年3月28日追記】2014年4月からは、予約式に改められた。
【2021年5月29日追記】さらにその後、基本的予約不要となり、神田笹岡線が入っていなかった笹岡集落の内部で乗降する場合に限り要予約となった。また、2021年春には環状運行化された
コメント (4)
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