広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

鉄道3題

2015-02-11 23:49:38 | 秋田のいろいろ
多少なりとも秋田に関係した鉄道の話題3つ。
●「こまち」を書いた人
工業デザイナーの榮久庵憲司(えくあん けんじ)氏が2月8日に85歳で亡くなった。「株式会社GKインダストリアルデザイン」を設立し、代表を務めていた。
キッコーマンの卓上醤油瓶、東京都、JRA、ミニストップのロゴなど、身近な分野でさまざまな作品を残したが、鉄道車両のデザインも多数手がけた。
(再掲)富山ライトレール ポートラム
榮久庵氏による鉄道車両は、富山ライトレールの「ポートラム」、209系などJR東日本のここ20年ほどの普通列車用車両、等々多数。

クリエイティブな分野の人の訃報記事では、代表作が示される。
役者や芸術家が亡くなった時も同じだが、所属事務所や遺族が発表時に提示したものをそのまま転載するのか、各社とも横並びで同じものを列挙する。
例えば、1月15日に亡くなった声優の大塚周夫さんの訃報では、20年以上前の「海原雄山」や40年も前の「ねずみ男」は多くが掲載した一方、晩年の主要キャストであった「山田伝蔵」に触れたマスコミは少なかった。(葬儀で「忍たま乱太郎」の原作者が弔辞を読んだそうで、アニメ化時に山田伝蔵の声は大塚さんでと要望したという)【13日追記】個人的には初めて大塚さんの声を認識した30年ほど前の「ピコピコポン」の「ガルガリ博士」が忘れがたい。

榮久庵氏の訃報では、鉄道車両では「成田エクスプレス」を多く(ほぼすべて)のマスコミが取り上げていた。
成田エクスプレスは初代(1991~2010年)の「253系」電車と、現行の「E259系」電車の2世代がある。報道では、その形式までは言及していなかったが、NHKなどではE259系の写真を示した。
両形式で車体の形状は異なるが塗装は共通しており、そのどちらも榮久庵氏によるものということらしい。

成田エクスプレスを引退した253系電車の一部は、日光方面の特急に転用されたり、長野電鉄に譲渡されたりして、現在も走っている。
長電のほうは成田エクスプレス当時とほぼ同じ外観。しかし、日光用は塗装が変えられている。こういう場合は、少なくとも外観は榮久庵氏の作品ではなくなってしまうのでしょう。

そして、成田エクスプレスの次ぐらいに多く書かれた(成田エクスプレスと並列で)のが、秋田新幹線「こまち」だった。
記事では「こまち」の頭に「初代」が付けられ、1997年の開業時から2014年まで使われた「E3系」電車を指している。(現行のE6系は奥山清行氏のデザイン)

E3系は、車内のデザインも榮久庵氏が担当したそうなので、ということは、今も走っている山形新幹線「つばさ」用E3系も手がけたとも言えるのだろうか。
ただし、その山形用E3系の外観は塗装変更され(奥山氏によるものだそうだが、奇妙な塗り分け)ているから、日光と同じことか?

再掲)E3系電車
というわけで、秋田に縁がある人が亡くなったことになる。
こういう場合でも、秋田魁新報はいつものように共同通信からの配信記事をそのまま載せるだけかと思ったら、そうではなかった。
10日付社会面で、「田園、雪景色意識しデザイン/初代こまちに愛着」などと、E3系のデザインについて、独自取材で比較的大きく記事(記者の署名あり)にしていた。こういう記事があってこそ、郷土の新聞だ。

田園風景や雪景色との調和、在来線区間での見え方を踏まえてデザインしたことや、GKインダストリアルデザインの鉄道担当者の「(略)本人にとっても特別な作品だったと思う」といった話が出ていた。

この記事でへえと思ったのが、「車体の「こまち」の文字は栄久庵さんが揮毫したもの」。
11号車と15号車の側面に毛筆で書かれていた「こまち」の文字は、デザイナー自ら書いたのか!
達筆だ

E3系は、1995年にいちばん最初の1編成だけが製造されて各種試験を行った後、量産された。この1本は「量産先行車」と呼ばれ、開業後は「R1」編成として活躍した。上の写真の右側の編成。
その製造当時~試験時は、「こまち」という列車名がまだ決まっていなかったから、この部分には「Series E3(E3系の意味)」と書かれていた。後の営業開始時に「こまち」に書き換えられた。

今回の魁の記事にはE3系の写真が出ているが、その量産先行車のもの。営業開始前の古い写真を持ってきたらしく、パンタグラフの形状が営業開始時と異なるようだし、側面にも「こまち」ではなく「E3」と表記されているのが、よく見ると分かる。
せっかく記事で取り上げたのに、「こまち」の文字の写真がないのは残念。
デビュー当時はビビットピンクのラインが斬新に感じられた


●県境の立ち往生
2月1日の23時頃から2日昼前にかけて、札幌発大阪行きの寝台特急「トワイライトエクスプレス」が立ち往生した。
機関車の前に雪を抱き込んで(1.5メートルほど積み上がったとか)動けなくなったそうで、その場所は青森・秋田県境近くの津軽湯の沢駅付近。場所としてはまだ青森県。
再掲)津軽湯の沢駅から上り方向。左が上り線。奥の矢立トンネルの中で秋田県に入る
テレビ映像によれば、機関車は矢立トンネルの中に入る前で停まり、最後尾の電源車がギリギリ津軽湯の沢駅のホームにかかる状態だった。

トワイライトエクスプレスは、乗ること自体が目的の豪華列車だから急ぎの用で乗る客はまずいないだろうし、廃止間近ということもあって、どのお客も遅れたことで長時間乗車できて幸運だったととらえていたようだ。(希望する客には、新幹線への振り替えも行われたらしい)
秋田県の大館駅の「鶏めし」が食糧として配られ、それも喜ばれたそうだ。

深夜に雪で長時間立ち往生と言えば、先日日本版が放送された「オリエント急行殺人事件」を連想させられる。日本版では、関ヶ原が現場となった。
(再掲)津軽湯の沢
津軽湯の沢も、線路から見ると、周りに人家が見当たらない、かなりの山奥に見える。しかし実際には数百メートルのところを国道7号線があって、駅まで道がつながっている。
当時の平川市碇ヶ関(津軽湯の沢の1駅隣)の積雪は、平年値60センチほどなのが1メートル。この程度なら、道路除雪や車の通行に大きな支障はなかったと思われる。


●流浪の番組?
テレビ朝日のミニ番組「世界の車窓から」。
1987年に放送が始まったそうで、溝口肇によるテーマ曲、石丸謙二郎のナレーションを含めて、番組のスタイルはほぼ変わらない。正真正銘の長寿番組と言えるだろう。
僕は外国の鉄道にはさほど興味はなく、熱心に見てはいないが、たまたま視聴したり、時には特定の国の風景に惹かれて録画して見たりしている。

昭和末期~平成最初期の秋田ではテレ朝系列局はなかったが、秋田放送(ABS)が放送していた(いつから始まったのかは不明)。午後のワイドショーの直後、15時55分からの放送で、見た記憶がある。
Wikipediaによれば、そのワイドショーは日テレ系ではなく、テレ朝の昼のワイドショーを遅れてネットしていたそうで、もしかしたらそれと抱き合わせのような形だったのか。
1992年に秋田朝日放送(AAB)が開局して、そちらに移った。

当時は、秋田以外でも多くの系列局(全局ではないようだ)が同じ時間に放送していたと思われる。
平日は「ニュースステーション」の前、21時54分から、土日は22時54分からだった。

2001年にニュースステーション(後に報道ステーション)の後、23時10分に移り、2013年からは週7回から5回の放送に減った。
2013年頃には、放送を打ち切る系列局が出始め、現在も放送している地上波局は、テレ朝のほかに11局(うち1局はTBS系)足らずになってしまった。


11局での放送の仕方はまちまち。
放送日時が違うのは当然として、放送回数が違う。
週に4回とか3回しか放送しない局があり、テレビ山梨に至っては週に1回しか放送がない。いずれも、1回当たりの放送枠の時間は1回分(複数回をまとめて放送するわけではない)。

そのため、放送を続けるうちにテレ朝の本放送からどんどん遅れて差が開いてしまう局もあるみたいだ(週3回の青森朝日放送はそうなのか?)が、多くの局は、放送回数を減らす分、途中を間引いているそうだ。例えば「テレ朝で毎週金曜に放送する分はネットしない」とか。

番組の公式ホームページでは、ネット局ごとの放送日時も掲載されているが、「放送局により、内容が異なります。」だけで「間引いている」とは言及していない。


世界の車窓からは、いちおう1回だけ見ても分かる番組内容ではあるが、前後のつながりというものがある。
飛び飛びに放送されては、「乗り換え駅の回がカットされて、いつの間にか他路線を旅していた」とか、「クライマックスの絶景の車窓を見られない」といった恐れが出てしまう。
そもそも、冒頭で「VOL.9677」と通し番号が表示されるから、熱心に見ている視聴者は間引かれていることに気づくだろう。(名古屋のメ~テレや大阪の朝日放送では、番号部分を書き換えているそうだ)
最後に「明日(次回)は○○駅を出発します」といった予告も流れるが、それはカットしているのだろう。

制作者にしてみれば、毎回連続して見てもらう前提で作っているだろうに、穴埋めというかつまみ食いのように放送されるのは、いい気分がしないのではないだろうか。
各局の事情やスポンサーの問題などはあるのだろうけれど、視聴者を軽視しているようにも感じられ、ひどい扱いだと思う。


では、我らが秋田朝日放送。
遅れがあり、予告はカットされてはいるものの、間引かずにちゃんと週に5回放送していくれていて、ありがたい(これが当然だとも思うけど)。
2月11日に、テレ朝の1月14日分が放送されたので、4週間遅れ。

ただ、放送時間が覚えづらい。
曜日としては、火、水もしくは木、金、土、日。「水もしくは木」というのは、1週ごとに入れ替わる。
時間は、平日が20時54分、土曜が24時09分、日曜が23時10分。
Wikipediaには月曜日にも放送されているようなことが記載されているが、現在はそうではない。ともかく、複雑でメチャクチャな放送日時と言ってもいいかもしれない。
もうちょっときれいに揃えられないものでしょうか。

テレ朝の「タモリ倶楽部」は「流浪の番組」を自称しているが、これは収録場所があちこちをさまよっていることからのようだ。
「世界の車窓から」こそ、「流浪の番組」いや「翻弄された番組」ではないだろうか。
コメント (5)
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