麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

シャッター通り商店街

2007年09月19日 | 鑑賞
 青年劇場第95回公演『シャッター通り商店街』(作/高橋正圀、演出/松波喬介)が公演中です。
紀伊國屋サザンシアターにて9/14~21。(他にも23日埼玉会館大ホール、25日府中の森芸術劇場ふるさとホール、26日かめありリリオホールと巡演)

 シャッター通り・・・随分前から話題になっていて、実際、東演の回りでも、お寿司屋さん、そば屋さん、ラーメン屋さんなどが店を畳んでいる。
 
 芝居は、大型店舗進出によって弱体化するパターンだが、東演のご近所は主に高齢化によるシャッター。かわりに若者が、バーを開き、昼はカレーをランチで出したりしている。
(勿論、この問題も重要だし、芝居の中の商店街にも、この問題は色濃く反映されているのだが、話がやややこしくなるので乱暴に進ませていただく)

 で。奇しくも舞台に登場する主人公・辰次(中川為久朗)もカレー屋を開こうと故郷に帰ってくる。こちらは本場インド仕込みのカレーだ

 次々にシャッターが閉まっていく「すずらん通り商店街」の気骨のコンビ…豆腐屋の緑さん(藤木久美子)と総菜屋の茜さん(高安美子)が…彼の帰還を手ぐすね引いて待っていて、東京から越してきた主婦の由紀絵さん(寺本佳世)や地元の小学校の雅子先生(浦吉ゆか)らと作っているタウン誌の、巻頭で“商店街再興のエース”と辰次を取り上げ、起爆剤にしようと企てる。
 かたや商店会会長(葛西和雄)は、目には目を、毒は毒を持って制すの体で、新たな大型店舗を誘致し、そこに商店街の店を移転する構想を打ち上げる!

 さて。辰次はインドで出逢った彼女の萌(大月ひろ美)を伴って来るのだが、東京に生まれ育った萌は、寂れた商店街より大型店舗での出店に未来を感じる……。

 かと思えば、同世代の榎(佐藤勇生)は、没個性のテナントではなく、通りに面した一戸建てで、個性豊かな世界に一つの帽子をこさえるのだ!と、すずらんでの出店に意欲を見せ、ベテランの帽子職人(西沢由郎)に弟子入りする。
 また、地元の農家の若者・信夫(奥原義之)は、無農薬野菜の生産に加え、今は作らなくなった地元の名産品種の復活に本腰を入れる……。
 と、あらすじの説明がてら登場人物を紹介すれば、こんな感じだ
 こんな人間模様の主たる舞台となるのが、辰次の実家の喫茶店「すずらん」だ。マスターであり父である猪四郎(青木力弥)の営む店に人が集い、騒動が起き、去っては来、来ては去る。

 さてさて。ある意味、話の本筋とは少々離れていながら、もっとも騒々しいのが辰次の兄で、市役所の役人の寅太(吉村直)である!
 芝居かぶれで、今稽古中の「ハムレット」にハマっていて、日常でもその語り口が消えないというマンガのような設定を“吉村節”全開で、会場を沸かせる。

 まあ、そういう意味で前述の登場人物達も皆、少々デフォルメされた、いわゆる“青年劇場テイストな人々”と言える。
 笑って、泣いて・・・という、同劇団の王道を行く舞台であった

 大変深い問題で、一本の芝居で解決なんざしないことを承知の上で創られており、だからカーテンコールでは「商店街の応援歌になれば…」と客席に向かって語られる。
その言葉通り、《一筋の希望》を感じさせて幕が降りる、とっても良心的な舞台であった。

 まあ、それを少々モノタリナイと思う人も多いかも、だけど…

 個人的には、スタイリッシュな帽子屋志望の榎を演じた佐藤勇生が、良かった。あと、ちゃんと農業やってそーに見えた素朴な奥原義之(信夫役)も。


【文中敬称略】
 
コメント
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