健太は決して主役を張るタイプの役者じゃない。
が、さんしょは小粒でぴりりと辛い、
的な役を振ると光る岐阜出身、
牡牛座のA型、35歳の男である。
器用ではないが、その作品が何を訴えたいか、
演出が何を際立たせたいかを
稽古の中で掴み取っていく、
左眉の端に黒子が縦に二つ並ぶ
彼女いない歴三年半の役者だ。
まだ芝居だけでは食えずにバイトをしている。
昨日久しぶりに飲む約束をしたら、
手に黄色い塩ビの袋を提げて待合せ場所に来た。
とりあえずのビールをほぼ同時に空けて、
僕は「ホッピーセット」と早々に言う。
「え、それ外だけにしてくださいよ、
俺焼酎水割りにするからボトル入れましょ」
僕は頷くかわりにピンポーンと
チャイムを鳴らし店員を呼んだ。
注文を取りに来るまで、一瞬、無言の時間。
健太は黄色い袋に目線をやって
「安全靴、買ったんすよ。…ほんとは普通の、
普段履くスニーカーかなんか買おうと
ネットとか見てたんすけど、
バイトの壊れちゃってね。仕方なく」
確かに安全靴は彼の生活の糧を生む
大切な武器のひとつだ。
「なんか目先だけの選択で厭だったけど」
と目を少し宙に浮かせてから続けて言う。
「例えば原発再稼働をしたい人達は、
今の電気が足りないとか、
財界の活性化に不可欠とか言うけど
なんつぅかもっと長い、もっと長~いスパン、
考えたら絶対ないと思うんです、僕」
そこにカンボジア国籍の店員が来て、
その話は中途で立ち消えたのだが。
まぁ健太の言わんとすることは判った。
明日は投票日だ。
※この話はフィクションであり
登場人物は実在しません((笑)
が、さんしょは小粒でぴりりと辛い、
的な役を振ると光る岐阜出身、
牡牛座のA型、35歳の男である。
器用ではないが、その作品が何を訴えたいか、
演出が何を際立たせたいかを
稽古の中で掴み取っていく、
左眉の端に黒子が縦に二つ並ぶ
彼女いない歴三年半の役者だ。
まだ芝居だけでは食えずにバイトをしている。
昨日久しぶりに飲む約束をしたら、
手に黄色い塩ビの袋を提げて待合せ場所に来た。
とりあえずのビールをほぼ同時に空けて、
僕は「ホッピーセット」と早々に言う。
「え、それ外だけにしてくださいよ、
俺焼酎水割りにするからボトル入れましょ」
僕は頷くかわりにピンポーンと
チャイムを鳴らし店員を呼んだ。
注文を取りに来るまで、一瞬、無言の時間。
健太は黄色い袋に目線をやって
「安全靴、買ったんすよ。…ほんとは普通の、
普段履くスニーカーかなんか買おうと
ネットとか見てたんすけど、
バイトの壊れちゃってね。仕方なく」
確かに安全靴は彼の生活の糧を生む
大切な武器のひとつだ。
「なんか目先だけの選択で厭だったけど」
と目を少し宙に浮かせてから続けて言う。
「例えば原発再稼働をしたい人達は、
今の電気が足りないとか、
財界の活性化に不可欠とか言うけど
なんつぅかもっと長い、もっと長~いスパン、
考えたら絶対ないと思うんです、僕」
そこにカンボジア国籍の店員が来て、
その話は中途で立ち消えたのだが。
まぁ健太の言わんとすることは判った。
明日は投票日だ。
※この話はフィクションであり
登場人物は実在しません((笑)