
今日、幕をおろしたラヴィニア公演
『-不思議の国のアリスの-
帽子屋さんのお茶の会』について。
二回にわたって論じます。
1)巨大演劇祭へのチャレンジ
別役実フェスティバルは、
民藝、俳優座、文学座、青年座に
円、昴、さらにはテアトル・エコー
といった老舗劇団をはじめ、
そこに連なる「新劇」の創造集団
銅鑼、名取事務所、Pカンパニーを中心に、
この手の催しには珍しく公立劇場
(新国立、北九州)の製作公演が加わり、
さらに小劇場までをも網羅した、
実に幅広い18ものカンパニーが集結。
かつ一年半という長期展開の大イベントだ。
そこに、ラヴィニアが参加した。
これまでごく一部のマニア(?)の間で
楽しまれてきたパフォーマンスが
巨大な演劇祭に参戦することで、
舞台成果にも大きな変化が見られた。
鎖国から開国へと舵を切った幕末のように。
2)ラヴィニアの変貌
ラヴィニアはもともと台詞を排して、
歌とダンスとマイムにより構成された
ステージで、その活動を始めた。
おとぎばなしや偉大な画家の生涯を
モチーフにしたオリジナルを放ち
評価を高め、やがて別役実の
エッセイを舞台化するに至る。
そこで、作品に台詞が顔を覗かせた。
そして。
初めて既存の戯曲に立ち向かう時、
選んだのは、別役の代表作
『-不思議な国のアリスの-
帽子屋さんのお茶の会』。
奇しくもこのフェスティバルにおいて
最多四団体が取り組む戯曲だ。
もちろん当たり前にはやらない。
大胆に音楽を取り入れたラヴィニア流だ。
つまり「こんにちは、みなさん」から
「みなさん、こんにちは」的な変貌だ。
何のこっちゃ?と多くの人が思うだろう。
『帽子屋さん~』の冒頭にある
《不条理》な台詞のひとつなのだ。
だけれでも。ここで説明などしない。
3)変貌の遷移
ラヴィニアが大幅なメンバーチェンジを経て、
今回が初めての《演劇》となる。
話が前後してしまったが、
ラヴィニアは演劇表現と並行して
音楽活動を行うユニットだ。
マイナーチェンジはありつつ、
女性三部(ときに四部)のコーラスを
結成以来貫いてきた。
その最強の武器《ハモり》を手放し、
Chako、Hiko、Kazuという三人になり、
かわりに手に入れた武器は、、、
作曲と演奏のできるKazuの音楽力と、
これまで如何なる努力をもってしても
かなわなかった可憐さ。
Hikoの若さと美だ。
Chakoにも若い頃はたぶんあったろう。
けれども他のメンバーを含めて、
そこに可憐はなかったのだ。
かくして新しく生まれ変わった
ラヴィニアはまず音楽のライヴを二発。
そして、ウッディシアター中目黒で
2013年11~12月以来の芝居に挑んだ。
客演の俳優たちの演技とラヴィニアの
圧倒的なハーモニーの融合は
最早繰り出すことは不可能。
前述の《新たなアイテム》を駆使し
日本演劇史に輝く一編に正面から、
いやもとい。やや斜め左から攻めて行った。
黒船に挑んだ江戸幕府軍よろしく。
(ここで休憩)