図書館から借りていた 藤沢周平著 「本所しぐれ町物語」 (新潮文庫)を 読み終えた。
藤沢周平著 「本所しぐれ町物語」
江戸本所を舞台にし、実在の地名の中に しぐれ町という架空の町を設定し、そこに住み暮す様々な人々を 順繰りに登場させるという一風変わった趣向の連作短編集である。
本書は 「鼬(いたち)の道」、「猫」、「朧夜(おぼろよ)」、「ふたたび猫」、「日盛り」、「秋」、「約束」、「春の雲」、「みたび猫」、「乳房」、「おしまいの猫」、「秋色しぐれ町」、
12編の短編で構成されているが、いずれも町民達の日々の哀歓、人情の機微をきめ細かく描いた作品である。
通常の小説のような全編を通して引き回す主人公がおらず、各偏の独立性が高い。
ただ 一つの物語で主人公だった人物が 他の物語では脇役になったりし、
しかも これらの物語を語り繋ぐような形で 一小説の体を為している。
その意味では 長編小説とも言えるのかも知れない。
主な登場人物、
大家の清兵衛、書役(加賀屋)の万平、岡っ引きの島七、茶漬け屋「福助」のおかみのおりき、「福助」の女中のおとき、居酒屋「おろく」のおかみのおろく、呉服商い菊田屋の新蔵、新蔵の女房のおたつ、新蔵の弟の半次、紅屋の若旦那の栄之助、栄之助の女房のおりつ、香具師の妾のおもん、おもんの飼い猫のたま、駿河屋宗右衛門、隠居の佐兵衛、佐兵衛の息子の亀次郎、亀次郎の女房のおくに、長太、新吉、油屋の政右衛門、おたか、政右衛門の娘のおいと、政右衛門の幼馴染のおふさ、おきち、おきちの父親の熊平、祈祷師のおつな、千吉、おつぎ、佐之助、おさよ、信助、御家のおせん、女衒の与次郎、重助、重助の女房のおはつ、・・・・。
似たような名前が 続々と登場、再登場するため
各偏毎に 改めて頭の中を整理しないとこんがらがってくるという難が有る。
それと 下級武士が主人公の藤沢作品を好んで読んでいる類には
「本所しぐれ町物語」のような市井物は
やや迫力が欠けるような、
やや間延びしてクライマックスが無いような、
ぐんぐん物語に引き込まれていく展開が少ないような
やや物足りなさを感じてしまう。