図書館から借りていた 畠山健二著 「本所おけら長屋」(四) (PHP文芸文庫)を 読み終えた。
「本所おけら長屋」シリーズの第4弾の作品である。
畠山健二著 「本所おけら長屋」(四)
(目次)
その壱 おいてけ・・・おいてけ堀の河童の捜索を始めた万造と松吉が巻き込まれた事件とは?
その弐 あかいと・・・左官の八五郎の娘、お糸と文七の恋がすったもんだの末決着?
その参 すりきず・・・島田鉄斎と因縁を持つ女スリが再び彼の目の前に現れて・・・、
その四 よいよい・・・酒にだらしない浪人若芽錦之介とおけら長屋の住人との抱腹絶倒の関わり?
その五 あやかり・・・長屋で孤立無援になってしまった松吉を 相棒の万造、島田鉄斎達が救えるか?
お江戸、本所亀沢町にある「おけら長屋」には 貧しいくせにお節介で人情厚い住人達が
次々起きる騒動に 笑いと涙で体当たりし まーるくおさめて暮らしている。
まるで江戸落語さながらの小気味良いテンポの会話が飛び交い、
思わず笑いを堪えられなくなったり、涙を誘われたりしてしまう。
ことが有ろうと無かろうと まるで一つ家族のように関わり合い、繋がり合う、長屋の住人達、
人の優しさが心に染み込んでくる時代小説である。
その参 すりきず の文中の1節、万造、松吉、八五郎、八五郎の女房お里が 島田鉄斎の家を覗き込んでいる場面、
四人は忍び足で鉄斎の家に近づくと 少し開いている引き戸の隙間から 折り重なるようにして中を覗き込む。中では女が背を向けて畳を拭いている。「何を覗いているのかな」。後ろからの問いかけに驚いた四人は そのまま土間の中に倒れ込んだ。「いてて・・・・・。おい万松、早くどきゃがれ。お里が潰れちまう」。四人が振り返ると そこに立っていたのは島田鉄斎だ。
その五 あやかり の文中の1節、松井町の居酒屋に集まった万造、松吉、鉄斎が 磯吉から猫の行方を知らされて、
万造は 猪口の酒を飲み干した。「それだけじゃねえですよ。島田の旦那。お熊ばあさんは おれたちに挑んできゃがったんでえ。おけら長屋のお手並み拝見ってね。こいつあ、しくじることはできなくなったぜ。おけら長屋の底力を見せてやらなきゃならねえ」、「面白くなってきたな。これだから あんたたちと暮らすのはやめられない。さあ どうする万松」、鉄斎は大声で笑った。
ほぼ 1話完結なので 読み易い。
「本所おけら長屋」シリーズは 第13巻まで 発刊されているようでなので
続編も楽しみになってくる。