数ヶ月前に、図書館に予約してあった、宮部みゆき著 「きたきた捕物帖」(PHP文芸文庫)が、やっと順番が回ってきて、先日借りてきたが、読み終えた。著者が、「生涯、書き続けていきたい捕物帖」と述べている連作時代小説「きたきた捕物帖シリーズ」の第1作目作品である。本書には、第一話「ふぐと福笑い」、第二話「双六神隠し」、第三話「だんまり用心棒」、第四話「冥土の花嫁」の四話が収録されている。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に 書き留め置くことにしている。
◯あらまし
江戸は深川元町の岡っ引き千吉親分の手下、しかも一番下っ端だった手下、北一(きたいち)は、千吉親分の急死後も、先吉親分の本業だった文庫屋の文庫本の振り売りで生計を立てている。深川一帯の差配人勘右衛門(通称・富勘)や、引っ越した先の富勘長屋の住人達や、武家屋敷の用人青海新兵衛と関わり合いながら、千吉親分の寡婦(おかみさん)松葉の協力を得て、事件や不思議な出来事に翻弄されながらも、自立、成長していく物語。そんな中で、湯屋の釜炊き喜多次(きたじ)と出逢う。喜多次が、16歳の半人前の岡っ引きもどき、北一の相棒となり、以後の物語の主人公となっていくという筋書き。若い二人の「きたさん」・きたきたコンビが、将来、どんな活躍をしていくのだろうか。従来の「捕物帖」のイメージを覆する、人情と優しさあふれる捕物帖だ。冒頭に、「きたきた捕物帖絵図(江戸、深川、本所の地図)」が掲載されていたり、随所に、独特の雰囲気の挿画が掲載されていて、物語のイメージが醸し出されている。
◯主な登場人物
北一、千吉・松葉、おみつ、万作・おたま、末三、勘右衛門(通称・富勘)、
沢井蓮太郎(本所深川方同心)、村田屋治兵衛(貸本屋)、宇多次(うた丁)
武部権左衛門(手習所師匠)、松吉、仙太郎、丸助、乙次郎、おしん、
(欅屋敷・椿山勝元の別邸)青海新兵衛(用人)、若様、瀬戸殿(女中頭)、
(長命湯)喜多次、長命湯主人とおかみ、吉松、
(富勘長屋の住人)お秀・おかよ、鹿蔵・おしか、寅蔵・おきん・太一、
おたつ・辰吉、
第一話「ふぐと福笑い」
役者のようないい男、江戸、深川元町の岡っ引き千吉(46歳)が、ふぐ中毒で急死してしまうところから物語が始まっている。本業の文庫屋は、一の手下万作・おたま夫婦が継いだが、岡っ引きの跡目は不在で、手札は、同心沢井蓮太郎に返上。千吉親分の寡婦(おかみさん)松葉(目が見えない分、匂い、気配で様々なことを察知することが出来る)は、冬木町の町屋に引っ越し、一番下っ端の手下北一(16歳)は、深川一帯の差配人勘右衛門(通称・富勘)の世話で、富勘長屋へ引っ越し、引き続き文庫本の振り売り(天秤棒の前後に吊るした台に乗せて売り歩く)で生計を立てる暮らしをしているが・・・・、
第二話「双六神隠し」
同じ手習い所の子供、海辺大工町の裏店富士富店の住人の松吉、笹川屋の仙太郎、魚勢の丸助は仲良し3人組、松吉、仙太郎が行方不明に・・、その真相は?、
第三話「だんまり用心棒」
深川一帯の差配人富勘は、よろず仲裁が仕事、色恋沙汰の相談も受けるが・・、深川菓子屋稲田屋の次男坊乙次郎とおしんの揉め事に、貸席で大芝居?。一方で、井口八右衛門の屋敷の離れの床下から名無しの権兵衛の骸骨が出てきて、同心の沢井蓮太郎の指し図で北一がその処理に当たる。どこの誰?、身元は?、真っ黒な天狗の顔の根付けとの関わりの有無?、忘れた頃に、噂が飛び込んできた。北一は、扇橋町のオンボロ湯屋長命湯を訪ね、釜焚き喜多次と初めて出逢う。ある日、富勘が誘拐?され、身代金要求の投げ文事件発生。下手人は?、北一と喜多次は・・・、
第四話「冥土の花嫁」
おかみさん・松葉からすすめられ、いわい屋万太郎、お夏の祝言の引き出物に、初めて朱房の文庫7個を製作することになった北一、四苦八苦の末完成、ところが祝言当日、事件、揉め事発生。お菊?、お咲、又吉?、おとし?、常吉?、・・・、みかり様のお仕置き?、殺し、北一は、釜焚きの喜多次が何者なのか、まだ分からないままだったが助っ人を依頼、おかみさん・松葉が、いわい屋に乗り込んで・・、
きたがきたがきたはきたへ(北一が来たが喜多次は北へ)行くところだった、と、つまらない地口が頭に浮かんだ。「何だ」と喜多次が言った。・・・、「岡っ引きの真似事しかできねえけど、うちのおかみさんは凄い知恵者だから、おいらでも手伝えることがあるなら、何でもやりたい」「ふうん」
本書の第三話「だんまり用心棒」で、初めて、物語の主人公である北一(きたいち)と喜多次(きたじ)が出逢い、喜多次が助っ人として、事件、出来事解決に加わり始める。本書は、これから始まる「きたきた捕物帖シリーズ」のプロローグ的色彩の作品。すでに、次作品「きたきた物語・子宝船」が、今年5月下旬に発刊予定のようで楽しみではあるが、新刊本には、図書館貸出予約者が殺到するため、実際に読めるのは、また、半年後?、1年後?になるのかも知れない。
(つづく)