◯続・寮歌の記憶
昭和30年代中頃、M男が、北陸の山村の親元を離れ、地方都市の学生寮に入寮し、生まれて初めて外で集団生活を始めた頃の話である。
2022年3月8日の「学生寮の記憶・その2」の中の「◯寮歌の練習」で、「歌詞をもらったようなもらわなかったような・・・」と書き込んでいたが、その後、その気になって、押入れのダンボール箱に詰まっている、ガラクタ、雑物を漁ったところ、寮歌の歌詞を手書きした小型のノートのような、手帳のようなものが見つかった。多分、当時、歌集等の印刷物等はもらっておらず、書き写したものだと思われる。すでに紙は劣化しており、うっかり触るとボロボロ破れ落ちてしまいそうなものだが、寮歌の一つを、そっと、スキャナーで取り込んでみた。「昨日の夕食、何食べた」も思い出せない後期高齢者であるが、寮歌のメロディーは、未だに脳裏に焼き付いていて、歌詞もほとんど暗唱出来るから、不思議なことだと思う。
寮歌
あけのこじょう
黎明の孤城
あけのこじょうに かねなれば
1、黎明の孤城に鐘なれば
はるさんげつは りょうらんの
春三月は繚乱の
うたげのにわの はなむしろ
宴の庭の花筵
はえのいのちに あこがるる
榮の命にあこがるる
こちょうのゆめは やぶられて
胡蝶の夢は破られて
たかんのゆうし いまさめぬ
多感の遊子いま覚めぬ
きたわたつみに くもひくく
2、北海洋に雲低く
ひがしくがちは まやみなり
東陸地は真闇なり
われらがおかは えいこうの
我等が丘は榮光の
たくみのかみを いつくみや
藝術の神を斎く殿堂
とはのさだめを にないては
永劫の運命をになひては
たまゆらもこそ つとめなん
瞬時もこそつとめなん
しうんのかなた ゆびさして
3、紫雲の彼方指さして
よのたびびとに きみつげよ
世の旅人に君告げよ
ちえのこのみの みのるもり
智恵の果の実る森
わかき◯◯◯の すむさとと
若き猟者の住む郷と
じんせのげらく なけれども
塵世の快楽なけれども
まことのみきは かもさるる
真理の美酒は醸さるる
(つづく)