朝方 時折薄日が射していたが 黒い雲の流れが早く、雨雲も垂れ込めてきて あっという間に周辺の山並みが隠れてしまった。今日も 降ったり止んだりの梅雨模様の1日になりそうだ。
買い物にもいかなくては・・・、
畑にも行かなくては・・・・、
気を揉んでいる妻、
様子見している間に 図書館から借りて読み掛けになっていた 藤沢周平著 「獄医立花登手控えシリーズ」第3弾目の作品「愛憎の檻」(文春文庫)を 読み終えた。青年獄医立花登が 数々の難事件に立ち向かい、解決していく連作短編時代小説である。
藤沢周平著 獄医立花登手控え(三) 「愛憎の檻」
◯目次
「秋風の女」「白い骨」「みな殺し」「片割れ」「奈落のおあき」「影法師」
「獄医立花登手控えシリーズ」」は 小伝馬町牢獄の牢医者、獄医である立花登が、牢屋巡回中等に、よく囚人からこっそりと頼みごとをされる。断れない性格で、それを解決するために奔走、危険な場面にも遭遇するが、鍛錬された柔術で立ち向かい、事件を解決していくという物語である。囚人のほとんどは、それぞれ暗い闇を背負い、鬱屈した事情を抱えていて、死罪になる者、島流しになる者等もおり、関わる女性達等の境遇も様々で、悪人を倒して終わりということにならない。江戸時代のリアルな人間模様が描かれている。一方で どうしようもないと思われていた従妹のおちえが見違える程の娘に変身し、次第に二人が接近していく様子、青春ドラマも同時進行する。
「秋風の女」
登は 女牢の牢名主およねから 「新入りのおきぬが牢下男佐七をいいように使っている」と聞かされる。佐七が届けた物とは?、「おまえはあの男に殺されるところだったのだぞ」、おきぬと喜三郎の関係は?、杉野屋とは?
「白い骨」
登は 入牢中のケチなかっぱらい辰平から、実は女房子供が有ると明かされる。女房おむらを探し当てると、17年前に家を飛び出していった辰平を 赦免出牢後に引き取るということになり、段取りをしてやったが、その辰平が殺さたことを 登は弥太郎から聞く。凶悪な盗人4人組に関わる殺人事件?、腹の虫が収まらない登は奔走、富蔵、忠助を突き止め、叩き伏せる。
辰平は白い骨になっておむらの厚い胸にぬくぬくと抱かれているように見えた。
「みな殺し」
登も顔見知りだった、叔父小牧玄庵の家からさほど遠くない裏店に住んでいた研ぎ屋芳平が盗みで入牢中に死んだ。自然死(病死)として処理したが、岡っ引きの藤吉に 芳平の死は 10人の手下がいるというむささびの七蔵がからんでいるようだと言われる。本シリーズ第2弾目の「押し込み」でも 渡り合った極悪盗人である。佐七、長蔵、弥七、雪駄屋の市次郎、絞り込んでいく登、盗んだ金の行方が鍵、登と藤吉は家にとびこみ、間一髪逮捕、登と藤吉コンビの捕物劇で終わる。
金はやっぱりこの家にありました。仏壇の奥に突っ込んであった。
「片割れ」
叔父小牧玄庵が不在中、刀傷治療にやってきた悪相な男、登と従妹おちえが治療したが、数日後、押し込みで怪我をした蓑吉が奉行所から入牢してきた。話を聞くと、どうも悪相の男が蓑吉の仲間に符合し 登は 一緒に治療したおちえの身を案ずるようになり、外出時には付き添ったりするようになる。登とおちえが急接近、青春ドラマの色合いが濃くなってきた。蓑吉の相棒凶暴な千蔵がつかまり、悪相の男は おちえの知り合いおちかの婿、清次郎であることが判明。
「だから言ったろう。医者は顔で選りごのみしたらいかんと」
「万事解決だ。な?」「でも、わたしはつまんない」・・・おちえは言っておいて顔を赤くしている。
「奈落のおあき」
おあきは かっての従妹おちえの悪友、札付きの不良娘だったが 「若先生、しばらく」と声を掛けられた登は あくどい程に化粧し、変貌したおあきに驚く。入牢中の伊勢蔵の牢見舞いにやってきたという。伊勢蔵は色白でおとなしそうな顔をしていたが・・・。登は囚人の嘉吉から5歳の娘の病気を看て欲しいと頼まれ、叔父玄庵と二人掛かりで命を救ったが 嘉吉はそのお礼にと 黒雲の銀次という盗人の情報を登に知らせようとして牢内で殺されてしまう。一方で 登がおあきに会ったことを聞いたおちえは 機嫌が悪くなる。やきもちだ。
しかし、女の勘は鋭いものだ。まるで おあきとの立ち話を盗み聞きしていたようじゃないか。
家を出たおあきを尾行する登と下っ引き、行き着いた先で 匕首で手向かう悪党を柔術で倒す登。大捕物の末、
人殺しの情婦?でもあるおあきのすすり泣きが
二度と立ち上がれない奈落の底から聞こえてくる嘆きの声のように聞こえた。(中略)「またやり直すさ。元気を出すんだ」
「影法師」
囲われ者だった母親おらくの旦那加賀屋伝助を刺したことで入牢中のおちせは 職人杉蔵の想いを受け止めることが出来ずにいた。母親の死は加賀屋伝助だと思い込んでいるおちせ、赦免出牢後 所在不明となるが、登は 岡っ引き藤吉の下っ引き千助と探索、謎解きを開始する。
一方で 人使いの荒い叔母松江の言いつけで屋根の修理をする登、おちえも上がってきて、二人で屋根に寝そべる。
「おちえ、おちえ」・・叔母の呼ぶ声に、二人はせんべいを噛むのをやめて息を殺した。おちえは首をすくめて登に笑いかけている。
難解事件に首を突っ込む若き牢医登も、次第におちえとのひとときが楽しくなり始めている風である。青春ドラマ風。
違う、別の人間だ。おちせの身の上があぶない。
勤めている小料理店を出たおちせを 登、千助、杉蔵が追尾、行き着いた先で?、
「杉田家佐兵衛だな、ちょっとそこの番屋まで来てもらおうよ」。おちせ「どうしたの?おじさんがなにかわるいことしたの?」、おちせは杉蔵を見おろし、登をみた。