古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

インディヴィジュアル・プロジェクション    阿部和重

2019-06-03 02:32:21 | 小説の紹介
新潮文庫   1997年


約十五年前に古本で買って、始まりを読んではやめ、読んでは


やめていた。てっきりスパイ小説だと思っていた。プロジェク


ションをプロダクションだとどこかで思っていた節があって、


いい加減なもんである。


どんどん読んでいるとハマってしまい、中盤からの引き込まれ


方はスゴかった、一気読みであった。


「多重人格」か「妄想」、「錯誤」か、実は高踏塾なるスパイ活


動する団体など、このヌマタという男のつくりごとで、すべては


錯誤。


夢のように思っている人生を哀しいかというと、本人にとっては


それはそれで幸せなのではないだろうか。一見、よその人からみ


たら可哀想で不幸でも、本人が信じているのだから、それはひと


つの世界ではあるよな、と感じる夕暮れであった。…………合掌。


                     (鶴岡卓哉)
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