「河童」所収。 集英社文庫
。
ミニマリズムにあふれた作品かもしれない。短いセンテンスの
中にイマージュや信念が入りこんでいる。
「人生に飽きている」と自殺の理由を述べているが、三十代後半
ボクも人生に飽きていた。人生に疲れていたし、もう人生なんて
飽き飽きした、と思っていた。その頃、丁度、本も読まなくなっ
ていたし、本当の意味で人生のどん底だった。いや、どん底と言
えば、二十代はずっとおみくじは大凶だったし、いろんな人にい
じめられてタイヘンだったが、タイヘンすぎて、死のうと思った
ことは不思議となかった。二十代のころは、37で死ぬとずっと思
っていた。
それから、40にバイトもやめてカフェを開いて、ちょっとよくなっ
てきて、本も読むようになったら、世界にはしらないことはまだ山ほど
あると気づけた。死ぬのはバカらしい、生きてみよう、と思った。37
で死なないでよかった。死んでいたら、今の景色は見られなかっただろ
う。芥川氏もタバコもやめて、もうちょっと狂人のたのしさを味わえたら
良かったのに、と思うのだが。……合掌。