新潮社 昭和24年
文女史は露伴の娘であり、その父を看取った
ことが描かれている。たいてい、誰もが親を
看取ることになるだろう。文女史の場合、
文豪の気難し屋とあってはいろいろ悩みも
多かったようである。いろいろ我が儘を露伴
は言ったらしく、例えば、氷を食べたいと
言えば、文さんは氷を駆けずり回って、手に
入れたという。愛憎入り混じった感情が渦巻
いていて、読むのもなかなかにして辛いも
のがある。決して、楽しい読書というわけ
にはいかない。苦読である。読書というものは
耐えるということでもある、ということを
教えられた気がする。文豪を父上に持つ悲哀
というか苦労、悼み入ります。
寝たきりになって、その大変さが身に沁みて
分かってくる。
ああ、わしの親も寝たきりにならなければい
いなあ、と思った。
(読了日 2024年7・18(木)23:20)
(鶴岡 卓哉)