青樹社文庫 昭和58年
冒頭、ヘッセの詩なんかがのっていて、すごく
文学的に始まる。それが、菱星(りょうせい)
自動車の不正部品を使ったクルマによる事故死
から、その未亡人に頼まれて、千野順一は
事件に巻き込まれてゆく。大会社による資本
の犯罪という視点はさすが社会派だ。
殺人も当然の如く起こり、そこいら辺はちょっと
込み入っていて分かりにくいのだが、ストーリー
テリングの妙で、話はつつがなく進んでいく。
最後は首相も出てきて、話は日本全体に及んで
ゆくあたり、スケールの大きさをほのめかせる。
うーん、単純に好きか嫌いかで言ったら、好みでは
ないかな。悪魔の飽食が良かったので、ちょっと
読んでみようか、と思い立ったのだが。
(読了日 2024年7・23(火)20:20)
(鶴岡 卓哉)