古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

幻の料亭 「百川(ももかわ)」ものがたり 小泉武夫

2023-11-15 02:12:30 | 小説の紹介
絢爛の江戸料理 新潮文庫

創作店シリーズですね。いっつも騙されてしまい、

分かってはいるんだけど、その世界に没入してし

まう。だいたい、料理500人前、90品って

大ぼらもいいとこでしょう。一億五千万円の商い


だっていうんだから、ちょっとこれはリアリティ

がなさ過ぎる。でも、大風呂敷広げないと、こう

いう話しはおもしろくはないですよ。

「百川」をずっとひゃくかわと呼んでいたし、

南畝もあとがきでなんぽと読むのだと知った。

なにも知らないほうが逆におもしろく読めるよ

うです。一大料亭ファンタジー。

(読了日 2023年10・20(金)21:16)     


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遠い太鼓  村上春樹

2023-11-14 05:02:35 | 本の紹介
講談社文庫  1990年

ぼくの読んだのは文庫版で、初版本である。

いつだったか、1990年代に、一度読ん

でいるので、再読である。1986年から

1989年までの三年間、日本ではバブル

真っただ中、きっと春樹氏はそういう日本を

見たくなかったというのが、ひとつあったの

ではないかな、と思う。

春樹氏とバブルって、相性悪そうだもんな。

三年間、ローマを拠点に「ノルウェーの森」、

「ダンス・ダンス・ダンス」などを書かれた。

もし、ヨーロッパに行かなかったら、「ノルウ

ェーの森」はもっと浮ついたものになっていた

のかもしれない。とても、きっと、小説の為には

いろんな意味で良かったのだろう。ローマは大変

なところだったらしい。ドロボーもいるし、でも、

実際、春樹氏はそういうものも含めたものを愛して

いたのだ、と感じた。

 (読了日 2023年10・13(金)9:07)
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人間の土地 サン=テグジュペリ

2023-11-13 10:00:37 | 小説の紹介
堀口大學・訳 新潮文庫 1939年 宮崎駿氏がこの本が愛読書らしく、装丁を 描かれ、あとがきも書かれている。飛行機 の話しで、空というと天空の城ラピュタを 想起もするが、この本は幻想飛行機小説 ともいうべきもので、手に取るように理解 できたかといえば、それは、手のひらから 逐一零れ落ち、幻想の彼方へと迷いこむこ ととなる。ぼくはおとなになってから、2 500冊くらい本を読んだと思うのだが、こ んな本を完読したのは初めてである。 非常に都会的で、SFチックでもあるし、とても 清潔だ。飛行機はその頃、軍事目的で造られ 本人も戦火でなくなった、ということだが、 平和ということに関して、人間の理りに対して 含蓄のあるお言葉が散りばめられていた。  (読了日 2023年10・10(火)2:20)
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鵠沼西海岸 阿部昭

2023-11-12 12:24:19 | 小説の紹介
「群像」昭和44年7月号

主人公の弟のことを描いた小説で、弟は

障害があって、不甲斐ない死に方をしてし

まった。

なんかすごく暗い小説で、ぼくの気分も

一気に落ち込んで、中二の時、ぼくに告

ってきた、はにわみたいな顔をした少女

のことを思いだしてしまった。その少女

とはなんの発展もない、知りもしない子

だったのだが、ある日、ラブレターを渡

してきた。ぼくは冗談かと思って、握り

つぶしてしまった。それが、ずっと、ぼくの

心に引っかかっていて、ときに、あの少女は

どうしているのだろうか、と思い、ああ、もう

50も過ぎてババアになってしまっているのか

とぼんやりと思ったりしている。

それで、この小説だが、ダークな気分になりたい

のなら、一発で、イヤなことやなんかを誘発し

てくれるだろう。いや、悪いけど、この人はもう

勘弁してほしい。耐えられそうにないから、暗い

のはけっこう好きだが、いかんせん、病むほど暗い

のはちょっと。

 (読了日 2023年10・6(金)1:50)








































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大いなる日  阿部昭

2023-11-11 09:04:23 | 小説の紹介
「既刊 芸術」第八号 昭和44年1月

50年以上前の作品で、「内向の世代」とか

いわれていて、その旗手だったらしい。これは、

幼年詩篇の続篇というもので、おやじさんが癌で

死にかかっているという感じだ。恐らく、私小説

作家といっていいと思う。自分の身辺で起こっ

たことを小説仕立てにしておられるのだろう。

おやじさんは年老いて、大佐だったというが、

これも、転がり込んできた手柄で、ようやく手に

した肩書らしいことが明らかになっていく。

私小説は久しぶりに拝読したが、この人はやはり

商業的に成功している人と見えて相当にうまい、

手練れた作家であったことが良くわかる。

 (読了日 2023年10・4(水)15:48)



















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幼年詩篇   阿部昭

2023-11-10 12:39:07 | 小説の紹介
講談社文芸文庫 昭和40年

敗戦後、偉い軍人だったはずの父は、家の

ものを売って生活をしていた。どんどん家の

ものは処分されていく。父は働こうとせず

働く気を見せて遊園地をやるんだ、と意気

込んで活動するも、友人にかつがれていたら

しく立ち消えになり、仕事も続かず、ダメ人間

となっていく父。少年は少年らしい清潔さで

もって描かれていくが、中坊になり、恋をす

るが、それもむなしく潰えてしまう。全体的に

暗いテーマでもって描かれているが、筆致は決して

そんなに暗いばかりではない印象だ。

55歳で89年に亡くなっているが、この短編を

読んで阿部氏のファンになってしまった。引き続き、

短編、読んでいきたいと思います。































































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料理心得帳    辻嘉一

2023-11-09 10:48:20 | 大道珠貴
中央公論社  昭和57年

ぼくの文学好きの発端というもののひとつに

料理文学というものがあって、檀一雄氏とか

から影響を受けている部分がある。

実際、2004~2012年までいろいろな

ところの厨房に立たせていただいて、武者修

行していて、今は、自宅で鉄板を使って、焼

きそば、ねぎっこ焼きなどを作っている次第だ。


料理は体得すべきだ、との教え通り、測って味

付けしたりするのはダメだと思う。焦げについて

も言及していて、二流どころのホテルで働いてい

たとき、これ、焦げてんじゃねえかよ、と先輩は

注意してきたが、焦げは大事な味のうちだ、と明言

されている。焦げは大事だ。焦げているぞ、と言って

いるうちはトーシローだ。食ってみれば、焦げてい

るくらいがいちばんうまい。

ウンチクもいっぱい載っていて、これはちょっ

と教えたい、というものもけっこうあったが、

魚を古語でイオといい、イという語尾の付いた

魚は古来より知られた魚だ、ということだ。タイ、

コイ、カレイ、ウグイ、セガイなどがそれだ、とい

うようなことが満載だ。残念ながら絶版らしい。

料理を志す人には一読して欲しいバイブルだ。

  (読了日 2023年9・28(木)0:15)





























































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日出(いず)る国の工場 村上春樹 え・安西水丸

2023-11-07 13:28:18 | 本の紹介
平凡社 1987年

日本の7カ所の工場を巡る、工場見学記。どれも

おもしろかったが、結婚式場だけどうしても興味

が持てず読み通せなかった。ぼく個人としては、

ラストのアデランスなんかが興味深かったな、

なんせぼくの頭には毛がないからだ。スキンヘ

ッドにしているのだ。このスタイルがいちばん楽

でいろいろと都合がいいのだ。なんで好き好んで

黒い髪にしなければならないのか、良くわから

ないが、それぞれいろいろ都合があるのだろう。

あと、一発目に紹介しているメタファー的人体

標本 京都科学標本がやはりなんでも一発目って

いうのは力が入っていて、いいですよね。人体模型

を作る会社なのだが、いい感じで会社の方も力が

抜けていて、読んでいて楽しかった。

この頃の春樹氏さんなんかヒマそうで、楽しそうだな。

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魚は粗がいちばん旨い 粗屋繁盛記 小泉武夫

2023-11-06 05:49:08 | 小説の紹介
新潮文庫  2018年

魚は粗が旨い、大根と煮るのはよく冬場に致すが

粗でこんなに料理ができるとは、まあ、ウソかホ

ントか分からんが。初め、実録ものかと思って読

んでいた。実に登場人物の肩書などが細かく設定

されていて、リアリティがあるからだが、粗神様

とかがでてきて、ああ、これは小泉氏の完璧な創

作なのか、と気づく。あれば、行ってみたいものだ。

とにかく、デテールに凝った小説で、その粗に及

ばず、、発酵に対する見識の深さには目を見張る

ものがあった。兎に角、おもしろくて、一日で一

気読みしてしまった。さて、ナイス! に行って

粗でも仕入れてくるか!

(読了日 2023年9・20(水)24:53)

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うなぎと日本人 伊集院静 選

2023-11-05 12:31:39 | 本の紹介
日本ペンクラブ編 角川文庫

日本人に生まれてきてよかったなあ、としみじみ

思うことはぼくはけっこうあるのですが、うなぎ

というのもいいもんである。特にたれのかば焼きの

うな重なんてものは、そうそう食えるもんじゃ

ないので、ぼくはこの十何年食わしていただいてい

ない。亡くなった人の文章ばかり(でもないか)

30人分のうなぎに関するアンソロジー。どの

人もそれぞれうまいが、阿川弘之氏、山口瞳氏、

向田邦子女史なんかのが特におもしろかった。

有名な人は有名になる理由があるんである。

大伴家持の〈石麻呂にわれ物申す夏痩に

よしといふものだむなぎ捕り食せ〉は有名

な万葉集の句だという。と付記しておく。

  (2023年9・19(火)12:05)






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