天国と地獄を分ける“細く赤い線”
* * * * * * * *
この作品、戦争映画なのですが、
派手な銃撃戦やヒロイズムを期待してはいけません。
この作品は、戦争と人間の不可解な関係について、静かに語っているのです。
1942年、太平洋戦争時。
映画のオープニングは、とても平和で美しい南の島から始まります。
一人の若者が南洋の島で、子供たちと戯れている。
何とものどかな光景。
これは米軍ウィット二等兵。
実は彼は無許可離隊、つまり隊から脱走していたことが解ります。
この作品は多くの兵が代わる代わるに主体となり、
その主観を示しながらストーリーが進んでいきますが、
その中でも、ちょっぴり詩的なこのウィット二等兵のモノローグが中心になっています。
まもなく彼は部隊に連れ戻され、
日本軍との激戦地となるガダルカナル島へ向かいます。
ニューカレドニア島を「天国に一番近い島」などと呼ぶことがありますね。
そのように、通常南洋の島々は、
平和でのどかで、美しく、
『楽園』と称されることが多くあります。
ガダルカナル島も、本来はそんな島の一つであるはず。
ところが、この美しい島で繰り広げられるのは、殺し合い。
個人的に憎しみあっているわけでもないのに、
「戦争」という名の下で、
本来タブーであるはずの殺戮が公然と行われている。
・・・まるで皮肉のように、確かに一番「天国」に近い場所だ・・・。
いや、天国ではなく地獄ですね。
シン・レッド・ライン、つまり細く赤い線。
これは、楽園と地獄の境界であり、
人間の通常と狂気の境界でもある。
この境界は一体何なのか。
この境界はどこから来るものなのか。
自ら問いかけながら、ウィットはあえて危険な任務に近寄っていきます。
自分の中に、のどかな平和を愛する心と、人を殺す邪悪さが同時にあるのを
いぶかしく思い、まるで試しているかのように・・・。
このような極限状態では、その人の人間性がまともに出てしまうのですね。
命がかかった状況で、何かを取り繕う余裕なんてないということか。
任務を終え、生き残って帰る兵士たちの顔は、
皆疲れ果てて重いのです。
帰国の喜びは少しもない。
そんなシーンが印象的でした。
この作品はテレンス・マリック監督前作から20年ぶりの作品、
ということで話題になったようです。
渋い作品ながら、実はものすごい豪華な出演陣。
それぞれほんのチョイ出演ではありますが。
映画制作陣の良心を結集した・・・という感じです。
「シン・レッド・ライン」
1998年/アメリカ/171分
監督:テレンス・マリック
原作:ジェームズ・ジョーンズ
出演:ジム・カヴィーゼル、ジョン・トラボルタ、ジャレッド・レト、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、ショーン・ペン、ジョージ・クルーニー
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この作品、戦争映画なのですが、
派手な銃撃戦やヒロイズムを期待してはいけません。
この作品は、戦争と人間の不可解な関係について、静かに語っているのです。
1942年、太平洋戦争時。
映画のオープニングは、とても平和で美しい南の島から始まります。
一人の若者が南洋の島で、子供たちと戯れている。
何とものどかな光景。
これは米軍ウィット二等兵。
実は彼は無許可離隊、つまり隊から脱走していたことが解ります。
この作品は多くの兵が代わる代わるに主体となり、
その主観を示しながらストーリーが進んでいきますが、
その中でも、ちょっぴり詩的なこのウィット二等兵のモノローグが中心になっています。
まもなく彼は部隊に連れ戻され、
日本軍との激戦地となるガダルカナル島へ向かいます。
ニューカレドニア島を「天国に一番近い島」などと呼ぶことがありますね。
そのように、通常南洋の島々は、
平和でのどかで、美しく、
『楽園』と称されることが多くあります。
ガダルカナル島も、本来はそんな島の一つであるはず。
ところが、この美しい島で繰り広げられるのは、殺し合い。
個人的に憎しみあっているわけでもないのに、
「戦争」という名の下で、
本来タブーであるはずの殺戮が公然と行われている。
・・・まるで皮肉のように、確かに一番「天国」に近い場所だ・・・。
いや、天国ではなく地獄ですね。
シン・レッド・ライン、つまり細く赤い線。
これは、楽園と地獄の境界であり、
人間の通常と狂気の境界でもある。
この境界は一体何なのか。
この境界はどこから来るものなのか。
自ら問いかけながら、ウィットはあえて危険な任務に近寄っていきます。
自分の中に、のどかな平和を愛する心と、人を殺す邪悪さが同時にあるのを
いぶかしく思い、まるで試しているかのように・・・。
このような極限状態では、その人の人間性がまともに出てしまうのですね。
命がかかった状況で、何かを取り繕う余裕なんてないということか。
任務を終え、生き残って帰る兵士たちの顔は、
皆疲れ果てて重いのです。
帰国の喜びは少しもない。
そんなシーンが印象的でした。
この作品はテレンス・マリック監督前作から20年ぶりの作品、
ということで話題になったようです。
渋い作品ながら、実はものすごい豪華な出演陣。
それぞれほんのチョイ出演ではありますが。
映画制作陣の良心を結集した・・・という感じです。
![]() | シン・レッド・ライン [DVD] |
ジェームズ・ジョーンズ | |
パイオニアLDC |
「シン・レッド・ライン」
1998年/アメリカ/171分
監督:テレンス・マリック
原作:ジェームズ・ジョーンズ
出演:ジム・カヴィーゼル、ジョン・トラボルタ、ジャレッド・レト、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、ショーン・ペン、ジョージ・クルーニー