映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

僕と妻の1778の物語

2011年07月24日 | 映画(は行)
まるでファンタジーのような



               * * * * * * * *

SF作家眉村卓さんと2002年にガンで死別した悦子夫人との実話です。


余命宣告を受けた妻(竹内結子)のために夫(草なぎ剛)は、
5年間1日1篇の短編小説を書き続けます。
それというのも、笑いは免疫力を高めると聞いたから。
思い切り楽しいストーリーを毎日毎日書き続けるのです。
その効果があったのか、はたまた薬のためか、
当初余命1年といわれていたものが、
5年間を生きて過ごすことができたのですね。



二人の闘病のシーンの合間に、
夫の描いたストーリーのシーンが挿入されます。
実話を元にしたリアルなストーリーなのですが、
全編を通じて、まるでファンタジーのようなふんわりとしたムードが漂います。
それはこの主演二人の醸す雰囲気でもあり、
その雰囲気を生かした作品作りを意図しているためとも思われます。
妻が勤めていた銀行、夫がお世話になっている出版社。
どちらもレトロなビルですね。
また、この二人の家が、いかにも懐かしい感じの日本家屋。
・・・といえば聞こえがいいですが、雨漏りのひどい、古い家です。
これが今風のナントカハウスだったら、
こんなに温かい雰囲気は出てきそうにありません。



いかにも美談ではありますが、夫はいいます。
「これは、自分がそれをしないと持ちこたえられないから、続けているだけなんだ。
それを妻が許してくれている。」
そのように認識できているところが、バックボーンとしてすぐれています。

SF作家は、イメージそのままに夢見がちで、
ちょっぴり現実の生活から遊離している。
そんな夫を見守り勇気づけて、支えてきた妻。
うらやましいくらいの確かな絆で結ばれている夫婦の、美しく哀しい物語でした。
泣けます・・・。

二人があこがれた美しい光景は、北海道にありました。
実際に来ることができてよかった・・・と、しみじみ思ってしまいました。

僕と妻の1778の物語 コレクターズ・エディションDVD
眉村卓,半澤律子
ポニーキャニオン


「僕と妻の1778の物語」
2010年/日本
監督:星 護
原作:眉村卓
出演:草なぎ剛、竹内結子、谷原章介、吉瀬美智子