映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

TIME/タイム

2012年09月24日 | 映画(た行)
SF的未来のヴァンパイアストーリー



                     * * * * * * * * * 

命の長さが通貨の代わりとなるという、
恐るべきSFアクションサスペンス。


舞台は、科学技術の進歩により、すべての人間の肉体的成長は25歳で止まり、
そこから先は、左腕に埋め込まれた体内時計が示す余命時間だけ
生きることができる、という世界です。
スラムに住む貧困層は、せいぜい1日分の余命をやりくりするのがやっと。
手をつなぎあう事で余命のやり取りができてしまうので、
強引に人の余命を奪うなどの犯罪も多発。
一方完全に居住地も隔離されている一握りの富裕層は、
永遠の命を謳歌する人々・・・。
救いようのない格差社会が描かれます。
主人公はスラムの住民ウィル。
彼がこの格差社会に立ち向かいます。



さて実のところ、資産の上では全く同じことが現実に起きており、
それが命の軽重につながっているというのも、
現実をそのまま透かしていますね。
ということで、今作のストーリー運びはともかくとして、
この世界のシステムを非常に興味深く見ました。
手をつなぎ合えば、余命のやり取りが出来る。
それはつまり、先に上げたように強盗もできますが、
人と分け合うこともできるのです。
家族や恋人。
文字通り自分の命を削って、自分の大切な人に分け与える命。
または、見知らぬ人にさえも分け与える命は、ほとんど神の域。
ウィルの正義感と優しさが、とてもいい。


一方、貧富の差にかかわらず、この世界の人々は子どもを除き、皆25歳なのです。
老人がいない。

だから本当は100歳を超える25歳もいれば、
先日25歳になったばかりのホンモノの25歳もいる。
(ウィルの実年齢は28歳。)
ところが精神的にはやはり次第に老成していくようなのです。
同じく肉体的に25歳の、シルビアの父や母の表情に、確かにそれなりの年齢を見ることができまして、
なるほど~と感心してしまいました。
もっとも、髪型などでかなり雰囲気は出ていましたけれど。



つまりこれはアレですよ。
永遠に年をとらない吸血鬼=ヴァンパイア。
他者の命を吸い取って生きながらえるという意味でも、同じですよね。
これはSF的未来のヴァンパイアストーリーなのです。
永遠の時を得て、果たしてそれが幸せなのかどうか。
現にウィルに100年の命を譲って自殺したのは、永遠の命に倦んだ富豪でした。
こんな社会ではただ倦怠に満ちるだけで、芸術など発展しそうにありませんねえ・・・
いろいろなことを想像できてしまう、非常にユニークな作品でした。

TIME/タイム [DVD]
ジャスティン・ティンバーレイク,アマンダ・セイフライド,アレックス・ペティファー,キリアン・マーフィ,オリヴィア・ワイルド
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「TIME タイム」
2011年/アメリカ/109分
監督・脚本:アンドリュー・ニコル
出演:ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライド、キリアン・マーフィー、ビンセント・カーシーザー、オリビア・ワイルド