映画と本の『たんぽぽ館』

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「天才柳沢教授の生活 32」山下和美

2012年09月25日 | コミックス
少年時代が好き

天才 柳沢教授の生活(32) (モーニング KC)
山下 和美
講談社


                           * * * * * * * * * 

この本は実は昨年12月、発刊まもなく買って読んでいたのですが・・・、
どうも特別にご紹介したい話がないようで・・・
寝かせたままになっていました。
そうこうするうちになんとまた次の新刊が出てしまい・・・。
やはり、せっかくなので一冊抜けるのも嫌だし、ということで
遅まきながらご紹介します。


冒頭、219話「遠く離れて」
なんだかこの頃お母さんの機嫌がとても悪い。
というのも近頃よく夜中にかかってくる電話のせい。
いたずら電話ではなさそうなその相手は、
いつも何語かよくわからない言葉で語りかけてくるのだけれど、
ちっともわからない。
「ヨモハラセンセ・・・」と、呼んでいるようで、
どうも番号を間違えてかけてきているようなのですが・・・。
柳沢教授は、もしかすると、うちとよく電話番号の似た
四方原教授と間違えているのかもしれないと思うのです。
けれど彼は2年前に亡くなっている。
柳沢教授はそれを相手に伝えようと思うのですが、
しかし、彼は電話にでることができない。
なぜなら、教授は9時できっぱり眠ってしまうので!!
はは・・・、ここが教授の教授らしいところです。
滅多なことでは生活習慣を変えません。
けれど2年前亡くなった四方原教授に
一体誰が何を伝えようとして夜毎電話をかけてくるのか。
好奇心がつのった柳原教授は、ある夜中、ついに自ら電話をとる・・・!!!
人と人の絆というのは、奥深いものですね。


223話「好敵手の追憶」
教授の少年時代のストーリーが好きです。
沈着冷静、頭脳明晰、三白眼のその少年は、
けれどもちっとも優等生ぶらず、人を見かけで判断したりもせず、
常に好奇心の赴くままに行動する。
そんな時同級だった相葉啓二氏はやはり優秀で、
政治の道に進み官房長官まで勤めた。
二人は小学校の時以来、何十年ぶりかで再開します。
相葉氏は語ります。

「私は誰にも弱みを見せたことがなかった。
親にも兄弟にも。
誰かに弱みをみせればそれですべてが失われると信じ続けてこの年まで生きてきた。
子供の頃、一番眩しかったのが君だ。
君は失うことなど少しも恐れず、純粋にあらゆるものに好奇心を抱いていた。」

そんな彼は、ある日柳沢少年に弱みを見られてしまったと思い込んで、
そのまま今日まで来てしまっていたのですね。
二人の性格、生き方。
まさにそれぞれの道。
時の流れが、どちらの生き方も肯定しています。


「天才柳沢教授の生活 32」山下和美 モーニングKC
満足度★★★☆☆