映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

テイク・ディス・ワルツ

2012年09月09日 | 映画(た行)
不満は人生につきもの



                    * * * * * * * * * 

マーゴ(ミシェル・ウィリアムズ)とルー(セス・ローゲン)は結婚5年目。
子どもはまだないけれど、仲睦まじく穏やかな日々を過ごしていました。
ある時マーゴは旅先で出会った青年、ダニエル(ルーク・カービー)に心惹かれるのですが、
なんと、実は彼は彼女の家のほんのすぐ近くに住んでいることがわかりました。
会いたいと思えばすぐにでも会えてしまうという状況で、
二人の気持ちは次第に接近していきます。
心揺れ動くマーゴには、夫の魅力が薄れて感じられていくのも事実。


・・・と、このように書けば、よくある単なる不倫のストーリー。
けれどなんというのでしょう、この作品、
「ひとつの愛を見限り、新しい愛に走る」ということをハッピーエンドにはせず、
かといって悲劇にもしていないのです。
このあたりの感覚が、とてもリアルな感じがしました。



人はそれを「幸せ」と呼ぶはずの状況にありながら、満たされない。
私達の心はなんと貪欲なことでしょう・・・。
あれほど愛しあったはずの相手が、
繰り返す日々の生活の中で色あせていく。
たとえ新しい愛を見つけたとしても、それは同じ事・・・。
果たして以前の穏やかな生活を捨てただけの価値が今の生活にあるのか・・・?
そんな事まで思ってしまうのですが、
でも、マーゴは自分の選択を決して後悔していないのです。
悩み、迷いながらも自分の選んだ道。
その結果を自分で引き受ける覚悟があればこそ、という気がします。
どのようにあがいてもこの倦怠と孤独からは逃れられない。
彼女の虚ろな眼の奥に、そのような覚悟がみえたような気がするのですが・・・。


「不満は人生につきものなのに・・・」
マーゴの義姉は、こういってマーゴを非難します。
そういう自分は不満を貯めまくってアル中。
どうやったっておとぎ話のように幸せな結末などありはしない。
であれば、周りの思惑よりも自分自身の思いを大切にすべきなのかも。
行動せずに後悔するか、
行動して後悔するか。
この選択がその人らしさなんでしょうね・・・。



さて、今作中のミシェル・ウィリアムズのスッポンポンシーン、
なんともあっけらかんとしていました。
それとちょっと驚いたのは、まあ、あちらのバスルームは浴槽とトイレが一緒になっていますよね。
マーゴがそこで用を足している最中に、夫が入浴のために入ってくる。
う~む、少なくとも私の感覚では、たとえ夫婦でもそこは見られたくない・・・と思うのですが、
あちらの方は平気なのでしょうか???
やや、カルチャーショックでした。
というか、こういうことが平気になってしまうというのは
限りなく相手が自分と同化しているということなんじゃないでしょうか。
そこまで自分と同化している相手に
トキメキを感じるなんていうことが、すでに無理という気がします。
マーゴの“うつろ”の原因は、案外そういうところだったりして・・・

テイク・ディス・ワルツ [DVD]
ミシェル・ウィリアムズ,セス・ローゲン,ルーク・カービー,サラ・シルヴァーマン
Happinet(SB)(D)


「テイク・ディス・ワルツ」
2011年/カナダ/116分
監督・脚本:サラ・ポーリー
出演:ミシェル・ウィリアムズ、セス・ローゲン、ルーク・カービー、サラ・シルバーマン