映画と本の『たんぽぽ館』

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奇跡のリンゴ

2013年06月09日 | 映画(か行)
「奇跡」なのはリンゴではなく、この男とその家族。



* * * * * * * * *

不可能といわれたリンゴの無農薬栽培に取り組み続けた
木村秋則さんの実話を映画化したものです。


青森県中津軽郡。
リンゴ農家の娘、美栄子(菅野美穂)と結婚し、
婿入りした秋則(阿部サダヲ)。
彼はもともと機械いじりが大好き。
時計やテレビ、バイク・・・なんでも分解し、その仕組を研究。
そういうことに熱中してしまうのです。
そんな彼が、妻が農薬で苦しんでいるのを見て、
なんとか農薬なしでリンゴを作ることはできないかと思い立つのです。
根っから研究好きの秋則に、無農薬栽培の火がつきます。
しかし、農薬を断てば、リンゴの木にたちまち害虫や病気が襲い掛かる。

私財を投げうち10年・・・。
貧困と周囲の無理解に苦しみながら、
それでも諦めずに家族で支えあい、無農薬の取り組みを続けます。



リンゴは人間が長い年月をかけて改良を繰り返し、
ようやく今に至っている。
だから、「お嬢様」のように大切に大切に扱わなければダメなのだ。
今更、原始に返そうとしても無理・・・、
地元の人はみなそう思っていたのです。
これで病気や害虫を移されてはたまらない、と。
それでほとんど村八分のような状況に陥ってしまう木村家。


しかし、私はまず、ここのお父様の心意気に打たれました。
他の農家でも特に年配者は、
無農薬には絶対反対の立場を取る人が多かったのです。
けれども、義父は、秋則の熱意を汲んで、
無農薬栽培を承諾します。

たぶん、娘の苦しみを見続けて来たためでもあるのでしょうね。
無情にもリンゴの木にたかる無数の毛虫たち・・・。
リンゴ畑の一角で作る他の無農薬の野菜はたわわに実っているのに、
なぜリンゴだけはダメなのか・・・。
1年や2年ならわかりますが、これが9年、10年となるともう壮絶としかいいようがありません。
リンゴは花も付けず、当然実もならない。
農家の収入はゼロ。
僅かな野菜を売り、冬は出稼ぎに出て・・・。


「あきらめない」というのは簡単ですが、
この場合それを貫き通すのは死活問題。
それができたのは、もちろん本人の強い意志もありますが、
なんといっても家族なのであります!! 
先ほど上げたお父さんもさることながら、
奥さんがすごいですよねー。
夫を信じ応援し続ける。
私なら資金が尽きたところでもうやめようと言いますね、絶対。
家族が皆で支えあったからこそ、あきらめないで頑張ることができた。
又、そうしたことが町の人達の心も少しづつ変えていくというのがいいなあ・・・。



ラストは泣けます。
満開のリンゴの花。
なんと美しい・・・。
このストーリーの「奇跡」は、リンゴが成し遂げたのではなく、
秋則とその家族が成し遂げたのだと、思う次第。
やはり、真実は重い。
彼がみつけた「答」も、すごく納得のいくものでした。



「奇跡のリンゴ」
2013年/日本/129分
監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ、菅野美穂、池内博之、笹野高史、伊武雅刀

家族の支えあい ★★★★★
不屈度★★★★★
自然の摂理★★★★☆
満足度★★★★☆