映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

最終目的地

2013年06月18日 | 映画(さ行)
新しくて古い。古くて新しい。



* * * * * * * * *

2009年作品と、わりと最近の作品なのですが、
何十年も前の古い映画のような肌触り。
「日の名残り」のジェームズ・アイボリー監督作品でしたか、
なるほど、納得。


南米ウルグアイの人里離れた邸宅。
そこにはある作家が家族と住んでいたのですが、
その作家は自殺で既に亡くなっています。
そこに残されているのは、作家の妻キャロライン(ローラ・リニー)、
愛人のアーデン(シャルロット・ゲンズブール)とその娘、
兄アダム(アンソニー・ホプキンス)と、そのゲイのパートナー・ピート(真田広之)。
この作家の伝記を書く許可を得るために、
アメリカ人青年オマー(オマー・メトワリー)が邸宅を訪れます。



妻妾同居に兄はゲイというセンセーショナルな状況でありながら、
彼らはそういう複雑な心境を胸の底に押しつつみ、
彼らをつなぎとめる作家の不在の中で、
まるで時が止まったような倦んだ時間を過ごしていたわけです。
そこへ新たな風を吹きこむのが、オマー青年の役割ということですね。



冒頭、自宅付近でオマーが沼に足をとられて
ニッチもサッチもいかなくなるというシーンがあります。
それはウルグアイで前にも後にも動けなくなってしまった作家の邸の人々と通じています。
彼らにはそこが最終目的地であったのか? 
ひとときは停滞しているように思えても、
生きていく限りは色々な可能性があるということですね。
そしてオマー自身の最終目的地も、また・・・。



ウルグアイの片田舎という、想像もつかない辺鄙な地。
本当に時間が止まったような・・・というのには最適の地なのかもしれません。
オマーの恋人が電話をかけてきて、
「ケータイを買えばよかったのに」というシーンに違和感を覚えるほどに、
全体が古色を帯びているのです。
でも確かに話題はゲイのパートナーとの同居。
あ、新しい・・・(^_^;)。
だからこそこの作品、あと50年後くらいに見ても、
全然古びないかもしれません。



さてさて、問題は真田広之さん。
うひゃ~という役柄で、
アンソニー・ホプキンスとのキスシーンまであったりしますが、
う~む、こういう役柄もできてしまうわけなんですね。
日本の作品では考えもつかないところですが・・・。
ゲイだからといって、ヘンにおねえっぽくないという方が普通なんでしょうね。
あ、そういえば、先日見た「メゾン・ド・ヒミコ」のオダギリ・ジョーさんもこんな感じでしたっけ。

最終目的地 [DVD]
アンソニー・ホプキンス,ローラ・リニー,シャルロット・ゲンズブール,オマー・メトワリー,真田広之
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


「最終目的地」
2009年/アメリカ/117分
監督:ジェームズ・アイボリー
原作:ピーター・キャメロン
出演:アンソニー・ホプキンス、ローラ・リニー、シャルロット・ゲンズブール、オマー・メトワリー、真田広之

古色度★★★★☆
満足度★★★★☆