社会派サスペンス!!
* * * * * * * * * *
人生でひとつ間違いをしたという言葉を遺し、父は死んだ。
直後、美汐の前に現れた郵便局員は、警視庁を名乗った。
30年にわたる監視。
父はかつて、国産原子爆弾製造に携わったのだ。
国益を損なう機密資料を託された美汐は、
父親殺人の容疑で指名手配されてしまう。
張り巡らされた国家権力の監視網、命懸けの逃亡劇。
隠蔽されたプロジェクトの核心には、核爆弾を巡る国家間の思惑があった。
社会派サスペンスの傑作!
* * * * * * * * * *
池澤夏樹さんの発売間もない文庫本です。
やっと現在の池澤氏に追いついたという感じ。
それにしても、本作はとてもリアルでシビア。
社会派サスペンス!
しかも女性が主人公の、ドキドキハラハラの物語です。
美汐の父は瀬戸内海の小さな島で漁師をしていたのですが、病で亡くなります。
その父が生涯隠し通した自身の過去の秘密を、美汐に残しました。
30年前、父は国産原子爆弾の製造に関わったというのです。
その計画は途中で挫折し、終了したのですが、
この国にとって、「そのようなことが行われていた」ということ自体が
外に漏れると大問題となるわけです。
そのため父も、この30年間公安によって監視されていたのです。
美汐は父が隠し通したデータを持って、命がけの逃亡を計ります。
美汐は島育ちで、泳ぐことには自身があります。
昨今どこにでもある監視カメラをくぐり抜け、
警察の捜査網をも出し抜いて、意外な方法で島を脱出するのです。
映画になりそうなこのアクティブなヒロイン。
カッコイイ!!
警察側の陰謀で、美汐は父親の殺人容疑で追われる身となってしまうのですが、
それでも、行く先々で彼女をかばい、助けてくれる人々が現れるのも、心地よいのです。
まあ、もともと実際に原爆を作るつもりはなく、
「作ることができるようにしておく」ということだったわけですが、
その研究データの行方が本作のミソ。
その因果に唖然として、ゾッとさせられました・・・。
そして最後の最後に、彼女はこのデータを
闇に葬るか、白日のもとに晒すか、
大きな決断を迫られるわけですが・・・。
私、読みながら
「こんなものは公表すべきじゃない、日本の恥・・・」
と思ってしまったのですね。
我ながら、年を感じました。
もっと若い頃なら、こういうストーリーを読んでも、
「負けるな! 絶対に世間に本当のことを知らせるんだっ!!」
と思ったはず。
自分ではそのつもりはないのですが、
なんだか妙に考え方が保守的になってしまっていることに気が付きました。
情けない。
まあ、だからといって教育勅語は絶対に受け入れられませんけれど・・・。
「アトミック・ボックス」池澤夏樹 角川文庫
満足度★★★★☆
![]() | アトミック・ボックス (角川文庫) |
池澤 夏樹 | |
KADOKAWA |
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人生でひとつ間違いをしたという言葉を遺し、父は死んだ。
直後、美汐の前に現れた郵便局員は、警視庁を名乗った。
30年にわたる監視。
父はかつて、国産原子爆弾製造に携わったのだ。
国益を損なう機密資料を託された美汐は、
父親殺人の容疑で指名手配されてしまう。
張り巡らされた国家権力の監視網、命懸けの逃亡劇。
隠蔽されたプロジェクトの核心には、核爆弾を巡る国家間の思惑があった。
社会派サスペンスの傑作!
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池澤夏樹さんの発売間もない文庫本です。
やっと現在の池澤氏に追いついたという感じ。
それにしても、本作はとてもリアルでシビア。
社会派サスペンス!
しかも女性が主人公の、ドキドキハラハラの物語です。
美汐の父は瀬戸内海の小さな島で漁師をしていたのですが、病で亡くなります。
その父が生涯隠し通した自身の過去の秘密を、美汐に残しました。
30年前、父は国産原子爆弾の製造に関わったというのです。
その計画は途中で挫折し、終了したのですが、
この国にとって、「そのようなことが行われていた」ということ自体が
外に漏れると大問題となるわけです。
そのため父も、この30年間公安によって監視されていたのです。
美汐は父が隠し通したデータを持って、命がけの逃亡を計ります。
美汐は島育ちで、泳ぐことには自身があります。
昨今どこにでもある監視カメラをくぐり抜け、
警察の捜査網をも出し抜いて、意外な方法で島を脱出するのです。
映画になりそうなこのアクティブなヒロイン。
カッコイイ!!
警察側の陰謀で、美汐は父親の殺人容疑で追われる身となってしまうのですが、
それでも、行く先々で彼女をかばい、助けてくれる人々が現れるのも、心地よいのです。
まあ、もともと実際に原爆を作るつもりはなく、
「作ることができるようにしておく」ということだったわけですが、
その研究データの行方が本作のミソ。
その因果に唖然として、ゾッとさせられました・・・。
そして最後の最後に、彼女はこのデータを
闇に葬るか、白日のもとに晒すか、
大きな決断を迫られるわけですが・・・。
私、読みながら
「こんなものは公表すべきじゃない、日本の恥・・・」
と思ってしまったのですね。
我ながら、年を感じました。
もっと若い頃なら、こういうストーリーを読んでも、
「負けるな! 絶対に世間に本当のことを知らせるんだっ!!」
と思ったはず。
自分ではそのつもりはないのですが、
なんだか妙に考え方が保守的になってしまっていることに気が付きました。
情けない。
まあ、だからといって教育勅語は絶対に受け入れられませんけれど・・・。
「アトミック・ボックス」池澤夏樹 角川文庫
満足度★★★★☆