映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

スリング・ブレイド

2017年04月27日 | 映画(さ行)
罪とは・・、正義とは・・・



* * * * * * * * * *

この間から、アカデミー賞受賞関連作で未視聴のものを見始めたのです。
本作は1997年アカデミー脚色賞受賞作品。
さすがにこういうのは面白い。
脚本賞、脚色賞狙いで見ればいいのだと思って調べてみたら、
すでに見たものがほとんどでしたが・・・。


過去に殺人を犯したけれど、『責任能力がない』ということで罪にはならず、
二十数年を精神病院で過ごしたカールが、
収容期間が過ぎたということで、
有無を言わさず退院させられるところから、本作は始まります。


彼は過去に母親とその遊び相手の少年を殺してしまったのですが、
その時まだわずか12歳。
知的障害があり、ほとんど育児放棄されていた彼が行ったことは、
確かに心情的には納得できてしまう動機の行為だったのです。


行き場もない彼をいきなり放り出すのもどうかとは思ったのですが、
幸い、気にかけて世話をしてくれる人がいました。
そして、カールは少年・フランクと知り合い、
その母親の了解を得て、フランクの家のガレージに寝泊まりすることになります。
また草刈り機などのエンジン修理の仕事につくこともできました。
彼の過去を知る人も知らない人も、
物静かで、慎ましく、真面目な彼に信頼を寄せていきます。
成り行きにどうも嫌な予感を感じていた私も、ひととき安堵。
意外なほどに、いい感じに物事が進み始めるのですが、問題が一つ。
フランクと母の家に、我が物顔で出入りする男がいるのです。
(フランクの父は亡くなっています。)
この男は、些細な事で切れやすく、すぐに乱暴を働きます。
そして、フランクには非常に威圧的。
カールがこの家にいることも実は気に入らず、常にカールを見下しているのです。
全く嫌な奴!!
となると、少しづつ展開が読めてきますが・・・。


罪とは、正義とは・・・。
考えてしまいますねえ・・・。
カールは子どものように純真なので、
間違ったことは、あくまでも間違っていて、法律がどうとかは考えない。
実際、ストーリーを見ながらつい
「あんなヤツ、死んじゃえばいいのに」
と、私も思っていましたから・・・。
実は彼の知的障害というのは見せかけだけなのでは(?)
などと勘ぐってしまいたくなるくらいに、彼は普通より頭が良いようにも思えます。
だって、彼の最後の行動前にしたことがあまりにも立派なので・・・。


すごく引きこまれてしまう作品なのでした。
本作はビリー・ボブ・ソーントンが監督・脚本・主演を務めていて、
アカデミー主演男優賞のノミネートも受けているのです。
す、すごい・・・。
スリング・ブレイドというのはつまり、草刈り鎌のこと。
以前カールが使用した凶器です・・・。

スリング・ブレイド [DVD]
ビリー・ボブ・ソーントン,ルーカス・ブラック,ドワイト・ヨーカム
角川エンタテインメント


「スリング・ブレイド」
1996年/アメリカ/134分
監督:ビリー・ボブ・ソーントン
脚本:ビリー・ボブ・ソーントン
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、ドワイト・ヨーカム、J.T.ウォルシュ、ジョン・リッター、ルーカス・ブラック
スリリング度★★★★☆
満足度★★★★☆