映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

トム・アット・ザ・ファーム

2017年04月15日 | 映画(た行)
愛憎絡まりあって



* * * * * * * * * *

グザビエ・ドラン監督に興味を持ってみました。
本作は、監督・主演両方を務めています。


恋人の男性ギョームが亡くなり、心が空っぽになってしまったトム(グザビエ・ドラン)。
葬儀のためギョームの実家のあるケベック州の田舎街にやってきました。
しかしギョームの母・アガット(リズ・ロワ)はトムの存在を知らず、
息子の恋人はサラという女性だと思っています。
そして、ギョームの兄・フランシス(ピエール=イブ・カルディナル)は、
トムのことを知っていますが、母の心境を案じ、
恋人であることを隠すように強要します。
フランシスはトムに対してやたらと威圧的で暴力的。
始めは反発を覚えていたトムですが、
次第にフランシスの中にギョームの姿を重ね合わせるようになっていきます・・・。



少し前にも、ゲイの男性の片方が亡くなり、
残された方が友の母に自分たちの関係を告げられないという同様の作品を見たばかり。
(「追憶と、踊りながら」) 
しかしこちらは、母ばかりでなく兄も登場して、
もっと危なくシビアな展開を見せます。



なるほど、グザビエ・ドラン。
愛憎が絡まりあってどちらかわからない感じ、それですね。



この兄フランシスについてです。
彼の母への思い。
弟がゲイであることを隠したり、葬儀でのトムの弔辞を期待したりと
とにかく母の心を乱すまいと一生懸命。
だけれども実は、この母のことも農場も、
自分を縛り付けるものとして、憎んでもいるのです。
そしてまた彼は弟ギョームに兄弟以上の感情を抱いていたことも感じられる。
だから彼はゲイだからというわけ以上に、嫉妬して
トムに辛く当たっているようなのです。

もともと、そういうケがあるので、次第にトムに対しても独占欲が湧いてくるのですね。
異常に優しくなったり、突き放し暴力的になったり・・・。
この異常性が怖い・・・!!



というわけで予測不能、ハラハラさせられる一作です。
この、とうもろこしのヒゲみたいなグザビエ・ドランの髪。
なかなかいいですよね~。
このイケメンで俳優兼監督。
天が2物も3物も与えてしまう例がまた一つ。



トム・アット・ザ・ファーム [DVD]
グザヴィエ・ドラン,ピエール=イヴ・カルディナル,リズ・ロワ,エヴリーヌ・ブロシュ,マニュエル・タドロス
TCエンタテインメント


「トム・アット・ザ・ファーム」
2013年/カナダ・フランス/100分
監督:グザビエ・ドラン
出演:グザビエ・ドラン、ピエール=イブ・カルディナル、リズ・ロワ、エブリーヌ・ブロシュ、マニュエル・タドロス