映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パーソナル・ショッパー

2017年06月01日 | 映画(は行)
目に見えぬ不気味なものの正体



* * * * * * * * * *

忙しいセレブに代わり、服やアクセサリの買い物を代行する
パーソナル・ショッパーのモウリーン(クリステン・スチュワート)。

彼女は数ヶ月前に、双子の兄を亡くしています。
兄は生前に、自分が死んだら必ず死後の世界からサインを送ると言っていました。
モウリーンは今、ひたすらそのサインを待っているのです。
そんな時、彼女のもとに届く不可解なメール。
彼女の行動を監視しているかのようなメールの発信者は、
彼女の欲望を刺激してきます。
気味が悪く思いながらも、抗い難くそのメールにしたがってしまうモウリーン。
果たしてこれは亡くなった兄からのメッセージなのだろうか、
それとも・・・。



私は特別な前前知識もなく本作を見てしまい、
始めは何かの事件に巻きこまれるサスペンスものと思っていたのです。
確かに、事件に巻き込まれはするのですが、
しかし、どうやらこれはホラーであるらしい・・・と思えてきて、
でも結局最後までどういうカテゴリに当てはめるべきなのかよくわかりませんでした。
まあつまり、そんなことはどうでもいいのですね。



あの、何かほの暗く嫌な意志を持った何者かの正体は結局わかりません。
これが兄なのだとしたら、なんということでしょう。
人は死んであちらの世界へ行ってしまったら、
もう生前の人格とは別物となってしまうということなのか。
ただ闇の世界に呑み込まれていくだけなのだとしたら、
それはあまりにもつらい認識だ・・・。
でもこれが兄ではなくただの悪霊か何かだと言うなら、
どうにも話が締まらないし、それこそホラーになってしまう・・・。
などと思ううちに一つの考えに至りました。



セレブの贅沢な買い物をしていたら、
嫌でも、そんなものに一生手が届かない自分が見えてきますよね。
こんなドレスや宝石が自分のものだったら・・・
そんな欲望が芽生えてきても当然です。
特に女子は、そういうものへのあこがれは特に強いですもんねえ・・・。
つまりこの、敵の正体は、彼女自分自身。
だからたとえ地の果てに行ったとしても、彼女はそれから逃れられない。
ドン・ドンと壁を叩くような不気味なその音は、
彼女自身への警告です。
あのシーンでは、彼女はすでにそれを受け入れているようにも見えますね・・・



そうそう、本作でパリ・ロンドン間の列車に乗るのに、
飛行機のような搭乗検査があるのだというのを、初めて知りました。
なるほど確かに、絶対に必要ですね。
特に昨今は。

「パーソナル・ショッパー」
2016年/フランス/105分
監督・脚本:オリビエ・アサイヤス
出演:クリステン・スチュワート、ラース・アイディンガー、シグリット・ブアジス、タイ・オルウィン

SNSの不気味度★★★★☆
あんな風に服買ってみたい度★★★★★!
満足度★★★★☆