映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

疑惑のチャンピオン

2017年06月29日 | 映画(か行)
業界ぐるみ・・・?



* * * * * * * * * *

おそらく、自転車ロードレースファンならば誰もが知っている人のはず。
ツール・ド・フランスで7連覇を達成したランス・アームストロング。
彼は癌でつらい治療を克服し、
奇跡的に復活してまたレースに臨むようになったのです。
苦難の果に栄光を手にしたロードレーサー。
そしてまたその傍ら、がん患者を支援する慈善活動に尽力。
癌で苦しむ多くの人々に勇気と希望を与えたスーパーヒーロー。



さて、ところが実はこの男はドーピングで薬漬けであったという衝撃の事実を、
本作はことの発端からつぶさに映し出していきます。



誘惑に負けたアスリートが、ほんの一度か二度というのならまだわかります。
でも、ことはそんなに単純ではない。
彼ははじめからそのつもりでドクターの元を訪れます。
ただ勝ちたい。強くなりたい。
そして有名になりたいと、その一心で。
そしてまたそれは彼個人のみならずチームのメンバー全員、
レース前に当たり前に薬物を点滴するようになっていくのです。
ほとんど、業界ぐるみと言ってもいい。
もちろんドーピング検査は常にあります。
それなのにどうしてバレないのか。
ドーピング検査への対処法も研究され尽くしているのです。
そしてあるときには陽性反応が出たとしても、
これを公言すると競技界が破滅するなどと脅したり・・・。
ほとんど公然の秘事のようにして隠蔽され続けるのです。
…全く信じがたいことです。



なにかおかしいと感じたたった一人のジャーナリストが疑問を呈しても、
それはしばらくのあいだ世間から無視され続けていたということを見ても、
人々はランスのスーパーヒーロー伝説を信じたかったのでしょう・・・・。



こんなインチキなスタート地点にありながら、
慈善活動を行ったり立派なスピーチをしたり・・・
本人の心はどこにありや??? 
そこが知りたくなりますが、ランス役ベン・フォスターはひたすら淡々と演じます。
心の葛藤などはあまり前面に出ない。
私たちはその心を推し量るのみです。



結局、ことが明るみに出るのは以前のチームメイトの告発から。
ランスのあまりにも驕り高ぶった気持ちが招いたことと言ってもいいかもしれません。
本作はスポーツものではなくて人間と社会のドラマ。
衝撃的でした。

疑惑のチャンピオン [DVD]
ベン・フォスター,クリス・オダウド,ギヨーム・カネ,ジェシー・プレモンス,ドゥニ・メノーシェ
松竹


「疑惑のチャンピオン」
2015年/フランス・イギリス/103分
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ベン・フォスター、クリス・オダウド、ギョーム・カネ、ジェシー・プレモンス、ダスティン・ホフマン
驚愕の真相度★★★★★
満足度★★★★☆