驚き、呆れ、笑うしかない。
* * * * * * * * * *
ジョージ・W・ブッシュ政権でアメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われた
ディック・チェイニーについての実話に基づいたストーリー。
1960年代半ば、酒癖の悪いろくでなし男ディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)は、
後に妻となる恋人リン(エイミー・アダムス)に叱責され、政界の道へ進み始めます。
下院議員ドナルド・ラムズフェルド(スティーブ・カレル)の下で政治の裏表を学び、
その後次第に頭角を現していきます。
そしてついに、ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権で副大統領に。
そしてその時、あの9・11同時多発テロが起こる・・・。
ブッシュ大統領のボンクラぶりを利用して、ほとんど実権を握ってしまったチェイニーは、
9.11をチャンスとして、更に自分の有利な方向へ政治を誘導していく・・・。
なんともうそ寒い気持ちにさせられてしまうのですが、
皮肉めいて描かれるこの作品、もう笑うしかないという感じですね。
本作の語り手の男性の正体が途中で明かされるのですが、なんとも驚き!!
あのメタボ体型だもの、心臓も悪くなりますよね・・・。
また、チェイニーが一旦引退したところで、エンディングロールが流れ始めるのですが、
なんとそれはフェイクで、物語の本当の始まりはそこからだったりする。
どうにもこうにも企みに満ちた作品であります。
そして私がちょっと驚きだったのは、
飲んだくれチェイニーのお尻を叩いてやる気にさせたのが奥さんだったということ。
妻リンは本人がかなり優秀な方で、
しかし女では何にもなれないので(時代が時代なので・・・)
夫を出世させようと思ったわけなのです。
実際選挙運動などでは彼女の演説のほうがよほど人の心をつかむ。
チェイニーの政治活動はほとんど妻との二人三脚だった・・・。
こういう女性の生き方もアリなのか・・・。
それにしても、このクリスチャン・ベールの変貌ぶり。
自ら20kgの増量をしたそうですが、特殊メイクの効果もあるのでしょう、
映画を見ながらも「本当にクリスチャン・ベール?」と何度も思ってしまった・・・。
バイス(vice)というのは、vice-presidentのように
職名などの前につくと「副」とか「代理」の意味になりますが、
単体では「悪徳」の意味になるのだとか。
なんともピッタリの題名なのにも、驚き呆れさせられます・・・。
<シアターキノにて>
「バイス」
2018年/アメリカ/132分
監督:アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーブ・カレル、サム・ロックウェル
歴史発掘度★★★★☆
悪徳度★★★★★
満足度★★★.5