映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ロープ 戦場の生命線

2019年04月15日 | 映画(ら行)

やってられないけど、やらねば・・・

* * * * * * * * * *


1995年、ボスニア紛争、停戦直後のバルカン半島の山間部。
ある村で井戸に死体が投げ込まれ、生活用水が汚染され使えなくなってしまいました。

国際活動「国境なき水と衛生管理団」のマンブルウ(ベニチオ・デル・トロ)らが現地を訪れ、
死体を引き上げる作業を開始しましたが、ロープが切れてしまい使用不能に。
やむなく代わりのロープを探しに行きますが、
停戦したとはいえまだ武装集団がいたり地雷が埋めてあったりします。
そしてロープなどどこにでもありそうなのになかなか見つからない・・・。
そんな時、不良グループといさかいを起こしていた少年を拾い、
彼の家にロープがあるというので行ってみることに・・・。

少年は紛争のため両親と離れ、祖父の家に来ていたのです。
だから少年の家といってもかなり離れていて、
そこにたどり着いた末に、彼らは思いがけないものを目撃します。
目的のものも見つけたのですが、どうにも切ない事情・・・。
コミカルではありながら、戦争という中での狂った日常を痛切に語っています。
戦場では異常が当たり前になってしまう・・・。

電気はなくてもなんとかなりそうですが、水はなければ生きていけません。
作中ではこの近辺に他に2箇所井戸があるのですが、
地雷が仕組まれていて、使えないことになっています。
唯一使える井戸に死体を投げ込むとは・・・。
何という非道なことをと怒りがこみ上げますが、
もしかするとそれをしたのは兵士ではなく、金儲けを企む者たちなのかもしれない
というのが余計にショッキング。

そんな中でも人々は生きていく他ありません。
村のおばあさんが牛たちを追いながら原野を歩いていきます。
国連軍の兵が「そこには地雷があるから歩いちゃダメだ!」と呼びかけるのですが、
「ここを通らないと家に帰れないよ!」とおばあさんは言う。
おばあさんは何も考えていないようでいて、実は牛の通ったあとを歩いていたのです。
たくましい村の人々の暮らしが伺える場面。
そしてこれがあとの場面の伏線だったというのが秀逸。

武器を持って闘うわけではない。
けれども、会議室で司令を下す誰よりも、戦争の本当の姿を彼らは知っているようです。
素敵な作品です。

ロープ 戦場の生命線 [DVD]
ベニチオ・デル・トロ,ティム・ロビンス,オルガ・キュリレンコ,メラニー・ティエリー
オデッサ・エンタテインメント



<WOWOW視聴にて>
「ロープ 戦場の生命線」
2015年/スペイン/106分
監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア
出演:ベニチオ・デル・トロ、ティム・ロビンス、オルガ・キュリレンコ、メラニー・ティエリー、フェジャ・ストウカン

理不尽度★★★★☆
満足度★★★★★