ボクシングに魅入られた男たち
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ボクサーの瓜田(松山ケンイチ)は、誰よりもボクシングを愛しているのですが、
試合では負けてばかり。
瓜田の誘いでボクシングを始めた小川(東出昌大)は、
才能とセンスに恵まれ、日本チャンピオンに王手をかけたところです。
そして、瓜田がボクシングを始めるきっかけとなった女性・千佳は、
瓜田の初恋の人だったのですが、今は小川の婚約者。
また、楢崎(柄本時生)は、女子にモテたいと言う理由で入門し、
基本なんかどうでもいいので、「ボクシングをやっている風」にして欲しいと言う・・・。
三者三様のボクシングに対する思いを描いていきます。
瓜田は、人当たりも良く、楢崎のような新人にも親切にコーチします。
試合には「また負けた~」と言って、ヘラヘラ笑って見せるのですが、
内心そうでないのは想像の通り。
後輩たちも影では「勝てないくせに、いつまで続けるつもりだろう」
などと噂しているのです。
一方、小川は順調に良い成績を収めているのですが、
脳にダメージが来ているらしく、
変な物忘れがあったり、ひどい頭痛に見舞われたりしています。
医者にこれ以上のダメージを受けると危険と言われており、
千佳ももうやめた方がいいと言うのですが、本人は全く辞める気はありません。
そして楢崎は、不真面目な理由で始めたボクシングでしたが、
瓜田の丁寧な指導のためか、順調に力を付けていき、
ついにプロテストに合格してしまう・・・。
殴られれば痛いし、試合には負けるし・・・、
けれどいつのまにか、彼もボクシングの虜になっていく・・・。
テーマソングがなり出したら急に元気が出て勝つ、
なんてヒーロー的な勝負のシーンなどはありません。
地道です。
やってもやっても勝てないことで落ち込み、続けることに自信を失う。
そして勝者であっても、勝つことの喜びだけではなく、
体の変調への恐怖がついて回る。
それでも、どうしてか彼らはボクシングにのめり込み、止められない。
そうした男たちの「ボクシング愛」についての作品なのでした。
ボクシングをする人たちの内、頂点に立つのはごくほんの一握り。
ほとんどの人たちは、少しの勝利か、あるいはほとんどダメだったかして、
ボクシング界の底辺に沈んでいきます。
そうした人々の思いを表しているのだなあ・・・と、しみじみしました。
松山ケンイチさん、東出昌大さんのボクシングシーンがお見事でした。
柄本時生さんも、ドシロウトから一人前のボクサーまでの変遷を
ステキに見せてくれました。
私がこの日見た映画2本に柄本時生さんが出ていて、
時生くん祭り状態でした。
どっちもどうでもいい端役ではなくて、重要な役。
こういうポジションに付けたら、役者冥利でしょうね。
「BLUE」は、タイトルマッチにおいて
赤コーナーにチャンピオン、青コーナーに挑戦者が付くことから、
「挑戦者」を表しています。
瓜田はいつも「青コーナー」側であると言う意味でもあります・・・。
<シネマフロンティアにて>
2021年/日本/107分
監督・脚本:吉田恵輔
出演:松山ケンイチ、東出昌大、柄本時生、木村文乃
ボクシング愛度★★★★★
満足度★★★★☆