今度は童話作家だニャ
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田宮宴は中堅出版社の女性編集者。
新人ではないものの、編集長や同僚、さらには担当作家の代理で
お使いをさせられてばかりの日々だ。
こんな仕事ぶりでいいのか、と自問自答するある日、
偶然に迷い込んだ袋小路で、人が煙のように消えてしまった?!
――後日、宴は担当する童話作家のミーミ・ニャン吉先生の事務所で、
秘書の丸山との打ち合わせの合間に、その不思議な出来事を話すことに。
すると、タキシードを着たような黒地に白の賢そうな猫をかたわらに、
丸山が意外な解釈を語り始めて……。
愛すべきニャン氏の事件簿パート2、出来だニャ。
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猫が日常の謎を紐解いていく、松尾由美さん「ニャン氏」のシリーズ、第2弾。
前巻では、大学を休学中の配送会社アルバイト、佐多くんの視点で描かれていましたが、
今回の主役は、中堅出版社の女性編集者・田宮宴(うたげ)。
童話作家であるミーミ・ニャン吉先生の担当となります。
ミーミ・ニャン吉はすなわち、アロイシャス・ニャン氏のペンネーム。
宴は仕事ではもちろん、何故かその他の行く先々で、猫連れの丸山氏と出会い、
様々な謎が解き明かされていくのを何度も目の当たりにするのです。
そして、この猫こそがミーミ・ニャン吉先生だと言う事実(!?)を知る・・・。
「金栗庵の悲劇」は、雪の山荘が舞台で、家の見取り図まで出てくるという、
これぞ本格ミステリという舞台立てにワクワクしましたが、
実のところはちょっと肩すかしの結末。
でもそこのギャップが面白かった。
「金栗庵(きんぐりあん)」はすなわち、「キング・リア」。
シェークスピアの「リア王」にかけてあるのですね。
そしてこの話には、前巻の佐多くんの相棒だった岡崎が登場するのも見所の一つ。
何にしても楽しめるストーリーです。
そして本巻でも、最後に宴がニャン氏にスカウトされかけるのですが・・・。
さてどうなりますことやら。
「ニャン氏の童心」松尾由美 創元推理文庫
満足度★★★.5