女であることの痛み
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17歳高校生のオータム(シドニー・フラニガン)は、
ある日自分が妊娠していることを知ります。
ペンシルベニア州では未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができません。
オータムのイトコで親友でもあるスカイラー(タリア・ライダー)は、
オータムの異変に気づき、お金を工面し、
中絶に両親の同意が必要ではないニューヨークへ2人で向かうことにします。
2人の少女の勇敢な旅。
しかし、ほとんどお金もなく、これがなかなか苦難の旅。
アメリカでは宗教上のためでしょうか、
妊娠中絶は日本におけるそれよりもずいぶんハードルが高いように思います。
ただそのため、養子縁組の制度は充実しているように思えますが。
良くあるこうした作品では、不意の妊娠に戸惑った少女が
苦悩を乗り越え勇気を持って出産をする・・・という運びが多いのですが、
本作は違うのです。
まずこんな時には、やはりお腹の子の父親が登場するものですよね。
まずはその相手と相談するのではないか?
ところがオータムにはその選択はハナからないようなのです。
そして親にも言えない。
だからとにかくお金がないのです。
しかも中絶するには若干時期が遅くなっていたので、
始めに行った病院では手術ができず、紹介された次の病院へ。
そして、手術の前準備が必要なので二日がかりになってしまう。
ホテルに泊まるようなお金もなくて、
病院で前金を支払ったら帰りの旅費までなくなってしまった・・・!!
全く、無鉄砲な少女の様子にハラハラしてしまいます。
オータムはひたすら無表情を通しているのですが、
病院で手術前のカウンセリングを受けるシーンがあります。
自身の性に関する質問事項に
「一度もない/めったにない/時々/いつも」の4択から答えるというもの。
カメラはずっとオータムの表情だけを長回しでとらえ続けます。
そして
「パートナーに暴力をふるわれたことは?」
「性行為を強要されたことは?」
という質問のところで、思わず涙がこぼれ嗚咽するオータム。
結局この質問に彼女は応えることができないのですが、
それはすでに答えているのと同じですね。
つまり彼女は相手にそのような扱いを受けたあげく妊娠した、ということなのです。
相手に相談するとか、生みたいという意志がなかったことに納得です。
そこで私は思い当たったのですが、相手はあの、
イヤーな感じの義父(母のパートナー)なのではないかと・・・。
作中答えはないのですが、あながち無理な想像ではないと思います。
母親にも相談できなかったわけですから。
スカイラーは、オータムよりも見た目がちょっとカワイイので、
男性からイヤな目つきで見られてしまうことも多いようです。
でも結局彼女は帰りの旅費を稼ぐために、
そのことを利用せざるを得なかった・・・。
危険を承知で。
女であることの痛み。
ズバリ、それこそが本作のテーマでありましょう。
女であるが故に、こんなにも生きづらい。
ですが、まだ17歳。
この痛みを知った彼女たちは、きっともっとたくましくなって生きていくのでしょうね。
そうであって欲しいです。
<WOWOW視聴にて>
「17歳の瞳に映る世界」
2020年/アメリカ/101分
監督・脚本:エリザ・ヒットマン
出演:シドニー・フラニガン、タリア・ライダー、セオドア・ペレリン、
ライアン・エッゴールド、シャロン・バン・エッテン
女の痛み度★★★★★
満足度★★★★☆
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