全体が水槽の中であるような・・・
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旧東ドイツの田舎町にある巨大スーパーが舞台です。
このスーパーで在庫管理係として働き始めた無口な青年、クリスティアン。
先輩で大ベテランのブルーノが、彼を見守りながら指導します。
クリスティアンは同僚の年上の女性・マリアンに恋心を抱きますが、
マリアンは結婚しているようです・・・。
スーパーというよりも倉庫のような、巨大スーパー。
荷物の運搬のため、フォークリフトが行き交います。
全く日の差さないこの場所で、クリスティアンや他の同僚たちも一日を過ごすのです。
そこで働いているのは、ブルーノを始めとして多くは気のいい人たち。
でも、それぞれが心の痛みを抱えているのです。
互いに、そんなところには立ち入りすぎないようにしているようです。
作中で、屋根裏に閉じ込められた鳩の話や、
売れるまでの間、生け簀に詰め込まれた魚が登場します。
それはまるでこのスーパーで働く人々。
嫌々そこにいるわけではないけれど、毎日の同じ事の繰り返しや、日の当たらない場所で、
何やら閉塞感が立ちこめているようでもある・・・。
鳩や魚たちのように「閉じ込められた」感じがしてしまうのですね。
それを一番に感じているのは実はブルーノだったのでしょう。
ブルーノはこの場所がまだ「東ドイツ」だった頃に、
ここにあった運送会社で長距離トラックの運転をしていたのです。
ところが国が再統一したときに、運送会社が閉じられて、この巨大スーパーとなった。
そこで働くことができたのはラッキーではあるけれど、
ブルーノはかつての自分の在りようが懐かしい・・・。
本作での「希望」というのは、まさにクリスティアンの若さにあるのかもしれません。
おそるおそるフォークリフトに触り、危なっかしいけれど少しずつ運転を覚えていく。
人妻に恋だってする。
こんな場所だって、彼なら希望を持って生きていけるのかもしれない。
ブルーノにはクリスティアンが少しまぶしかったのかもしれません。
クリスティアン自身は、前科もあって、
あまり自分に自信を持っていなそうではありますが・・。
ほの暗く、静かで、無機質で冷たいようでありながら、
そこはかとなく人々のぬくもりも感じられる。
なんともステキな作品。
<WOWOW視聴にて>
「希望の灯り」
2018年/ドイツ/125分
監督:トーマス・ステューバー
原作:クレメンス・マイヤー
出演:フランツ・ロゴフスキ、サンドラ・フラー、ペーター・クルト、アンドレアス・レオポルド
満足度★★★★☆
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