映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「絶叫委員会」穂村弘

2019年06月27日 | 本(エッセイ)

インパクトのある言葉の数々

絶叫委員会 (ちくま文庫)
穂村 弘
筑摩書房

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町には、偶然生まれては消えてゆく無数の詩が溢れている。
突然目に入ってきた「インフルエンザ防御スーツ」という巨大な看板、
電車の中で耳にした「夏にフィーバーは暑いよね」というカップルの会話。
ぼんやりしていると見過ごされてしまう言葉たち…。
不合理でナンセンスで真剣だからこそ可笑しい、天使的な言葉の数々。

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最近なんとなく「ちくま文庫」にはまっていまして、
書店に行くと、ちくま文庫の棚の前につい足を運んでしまいます。
そんな中で見つけたこの本。
歌人・穂村弘さんが日常の生活の中で見聞きしたインパクトのある言葉が集められています。

 

例えば巻頭付近にあるのが
「俺の靴どこ」
全然何ということのない言葉なのですが、これが、剣道の試合の後倒れてしまった少年が、
最後にこう言ったあと、亡くなってしまったのだというのです。
"意識を失った少年がこの世で最後に口にした言葉としての凄まじいリアリティと輝きに満ちている。"
なるほど。


「出だしの魔」というところでは
ある結婚式のお祝いのスピーチ。
「ケイスケさん、ユミさん、ご結婚おめでとうございます。」
これも別になんともないように思われるのですが、
実はこのときの新郎新婦はケイスケでもユミでもなくて、似た名前でも全然なかったという・・・。
凍りついたような会場の雰囲気が目に浮かびますね。
なぜこんなことになったのかは、実際に読んで確認下さい・・・。

言い間違いであれ、天然系であれ、
言葉を紡ぐ歌人なればこそ、「アレ?」と思う言葉に、
常の人以上に引っかかりを覚えるようです。
いえ、歌人でなくても十分に面白いですけれど。


私が思わず吹き出してしまったのは最後にあった
「でも、さっきそうおっしゃったじゃねえか!」
仕事の打ち合わせでクライアントから理不尽なことを言われたときに、
つい出てしまった言葉だそうです。
使わねばならない敬語と本音がステキにごっちゃになって、お見事!!

楽しめます。


「絶叫委員会」穂村弘 ちくま文庫
満足度★★★★☆



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