皮肉な愛憎劇
* * * * * * * * * * * *
第65回アカデミー賞関連作。
20世紀初頭、イギリス。
中流階級のシュレーゲル家と実業家ウィルコックス家は旅行中に親しくなり、
そんな縁で、次女ヘレン(ヘレナ・ボナム・カーター)が、
ウィルコックス家の田舎の別荘「ハワーズ・エンド」に招かれます。
そこでヘレンは次男ポールに一目惚れするのですが、
行き違いがあって両家は気まずい関係になってしまいます。
けれども、長女マーガレット(エマ・トンプソン)は
ウィルコックス家の老婦人ルースと交流を続けていて、信頼関係を築いていました。
やがて、ルース夫人は「ハワーズ・エンドは、マーガレットに譲る」
という遺言を残して、他界します。
しかし、ウィルコックス家当主ヘンリー(アンソニー・ホプキンス)や
他の家族たちはそれが面白くなく、
遺言はもみ消されて、なかったことにされてしまいます。
そしてその後、マーガレットがヘンリーの元に後妻に入ることになり・・・。
本作のキーパーソンとして一人の貧しい青年が登場します。
ヘレンは青年とふとしたことで知り合いますが、
ヘンリーが「彼の勤める銀行はまもなく倒産するので、転職した方がいい」
というので、その通り青年に忠告。
青年はそれを信じて別の銀行に勤めることができたのですが、
まもなく人員整理でクビになってしまいます。
ヘンリーはほんの思いつきで口走ったことなど後には覚えてもいません。
失業し、妻を養うのもつらくなって困り果てた青年に、
ヘレンは深く同情してしまうのですが、
もちろんヘンリ-は責任をとろうともしません。
こんなわけで、この両家には愛情ある絆と共に、
深い憎しみの谷もある、というなんとも面倒な状況に・・・。
私が本作を見ていちばん納得できなかったのは、
ヘンリーからのプロポーズにマーガレットが待ってましたとばかりに、すぐさまOKしたこと。
妹が彼を嫌っていることも無理はないとわかっているはずなのに・・・、
やっぱりお金の力なのかと、ちょっと失望。
まあ確かに、その時シュレーゲル家の住まいは契約が切れて
明け渡さなければならないことになっており、
その先の住居に困っていたという事情はあるのですが・・・。
でも最後まで見ていくと、結局この物語は、
純真で親切そうに見えるマーガレットの、
生きていくたくましさを描いたものだったような気がします。
老婦人と親しくなったのも、結婚も、そしてハワーズ・エンドのことも、
実はすべて彼女の計算ずくだったと言われても納得できる気がしてきました。
逆に、欲もなにもない天然お人好しのマーガレットが
いちばん得をする、という話のようでもある・・・。
どちらと思うかで、その人の人柄がわかる・・・
ということなら、私はやはり人が悪いということになるな・・・!
ハワーズ・エンドは豪華邸宅ではなくて、片田舎の古くさい、けれども美しい
花に囲まれた小さなお屋敷なのです。
この家を巡る人々の皮肉な愛憎劇。
見応えがあります。
<WOWOW視聴にて>
「ハワーズ・エンド」
1992年/イギリス・日本/143分
監督:ジェームズ・アイボリー
原作:E・M・フォースター
出演:アンソニー・ホプキンス、バネッサ・レッドグレーブ、ヘレナ・ボナム・カーター、エマ・トンプソン、ジェームズ・ウィルビー
愛憎度★★★★☆
英国の時代性★★★★★
満足度★★★★☆
「ハワーズ・エンド」も是非とも観たいです。
( ..)φメモメモ
あります。そういうことが、よく。
ネット配信で見る前に、以前見ていないかどうか、しっかり確かめることにしています。
というか、別に2回見てもかまわないわけではありますが、なんか損をしたような気になりますよね。