映画と本の『たんぽぽ館』

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「ロング・グッドバイ」 レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳

2015年10月09日 | 本(ミステリ)
純粋であるがゆえに破滅の道を歩む男

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
村上 春樹
早川書房


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私立探偵フィリップ・マーロウは、
億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。
あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。
何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。
しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。
が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた…
大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、
村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞受賞作。


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本作は少し前にNHKのドラマで放送していまして、それを見ていました。
ドラマは日本を舞台として、
私立探偵フィリップ・マーロウに浅野忠信、
やさぐれていながらどこか品の良さを匂わせるテリー・レノックスに綾野剛という配役。
実のところ私は綾野剛さん見たさで見ていました。
ちょっぴりけだるく懐かしい感じの昭和の時代背景。
本作を読んで、ようやくその雰囲気を出そうとしていた演出の意図が改めて納得できた感じ。
ですが、やっぱりこれは、アメリカのものですね。


このハヤカワ文庫版は、巻末に村上春樹氏の、
それこそ「長~い解説」があるのがお得です。
村上春樹氏によれば、この「ロング・グッドバイ」は、
スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」を下敷きにしているのではないかというのです。
一瞬、こちらはミステリだし、そんなことってあるかなあ・・・と思ったのですが、
言われてみれば確かに類似性があります。
軸になるのは、深い罪悪感を持ち、そのせいで酒に溺れ、破滅の道を歩む男。
しかし、彼は純粋な夢を隠し持っている。
そして、その男に魅力を感じ、案じつつ友情を結ぶ語り手。
双方ともにそのような構図があり、
そしてそれこそが作品の魅力となっているわけです。
滅びの美。そして男のロマンチシズム。


さて本作、それでもさすがミステリなので、
ラストには思いがけない真実が明かされます。
ロング・グッドバイ。
フィリップ・マーロウは同じ男と二度の別れを体験することになるわけですが、
その二度目こそが辛く切ない。
和製の様々なミステリにも登場する「ギムレット」は
このフィリップ・マーロウが元祖だったんですね。
今度飲み会に行ったらぜひ飲んでみよう。
ギムレット。

「ロング・グッドバイ」レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳 ハヤカワ文庫
満足度★★★★☆



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