相手にとどめを刺しちゃいけません
東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫) | |
遥 洋子 | |
筑摩書房 |
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教授は言った。
「相手にとどめを刺しちゃいけません。
あなたはとどめを刺すやり方を覚えるのでなく、
相手をもてあそぶやり方を覚えて帰りなさい。
そうすれば、勝負は聴衆が決めてくれます」
タレントは唸った。
「本物は違う!」
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著者遥洋子さんは、1997年から3年間、
東京大学大学院の上野千鶴子ゼミを特別ゼミ生として受講。
本作にはその時のことが描かれています。
そもそも著者がこのことを決意したのは、
しばしば出演するTV討論会で、フェミニズム的立場で物を言っても
男たちにことごとく粉砕されてしまう・・・という悔しさからのようです。
その気持は良くわかります。
いくら言っても糠に釘というか、まともに受け止めてもらえない感じ・・・。
なんとかしっかり学んで力をつけて、男どもを打ち負かしてやりたい、と。
しかし教授が「相手にとどめを刺しちゃいけません。」といったのは、上記紹介文の通り。
しかしそもそも、まずこの上野ゼミについていくことが至難の技であった、
というところから話は始まるのです。
東大大学院と聞くだけでもビビりますが、まさにその通り。
資料がどっさり、しかもどれも難解でいくら読んでも頭に入っていかない。
しっかり準備をしなければ授業についてもいけない・・・。
こんな状況をよくぞ3年間も・・・と、
私はそれだけで著者を尊敬してしまいます。
上野千鶴子さんは、相手によって言葉を使い分けされているようで、
私がこれまでいくつか読んだ本の中でも特別に難解と感じたことはありません。
それは上野教授があえて一般庶民にわかる言葉に翻訳して書いていてくれていたからだったようです。
著者が上野教授の「家父長制」を定義する文章として挙げたのが、
『女が自分の胎から生まれた生きものを、
自分を侮蔑するべく育てるシステムのこと』。
まさに、こうしたシステムが連綿と引き継がれてきた結果の今日であります。
過激な表現の底にはそれを支える膨大な理論がある。
その裾野に広がるであろう広大な理論の海を著者は感じるわけですが、
私も、その海を頼もしく思わずにはいられません。
ところでこの本が単行本で刊行されたのが2000年1月。
それから20年近く経つというのに、
女性たちを取り巻く環境にそう変化があったようには思えない・・・。
上野教授が大学の入学式の挨拶で残念な内容をスピーチしなければならなかったくらいに・・・。
女性たちよ、もっと「普通」を疑おう!
「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」 遥洋子 ちくま文庫
満足度★★★★☆
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