映画と本の『たんぽぽ館』

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魔女と呼ばれた少女

2013年12月16日 | 映画(ま行)
目を背けたくなる現実と、幻想と



* * * * * * * * * *

コンゴ民主共和国の殺伐とした実情を背景に、
その中でたくましく生きる少女の姿を、幻想的シーンを交えてつづります。



コモナの住む村は貧しいけれども平和でした。
ところがある日、反政府軍が村を襲撃します。
コモナは両親を殺すよう強要され、
そしてそのまま拉致され、反政府軍の兵士に仕立てあげられてしまいます。
全く胸が痛む話ですが、すべて、現実に行われていること・・・。
そんな中で、コモナは死んだ人々の亡霊を見、
その亡霊に導かれることで勝利を招くということで、
次第に“魔女”として崇められるようになります。

でも、いつまでも運の良いことが続くとも思えません。
“魔女”の力を失った時、コモナがどうなってしまうのか、
人の命など虫けら同然のこの世界で、結果は明らかです。
コモナに好意を寄せ、何かと彼女をかばってきた少年兵“マジシャン”は、
彼女を引き連れ、この部隊を逃げ出すのですが・・・。



荒々しく殺伐として、あまりにも過酷なこの国の実情と、コモナの運命。
通常戦争映画ではひたすらその悲惨さを訴え続けるだけなのですが、
本作は少し趣きが異なります。
ファンタジックと言うと言葉が甘くなりすぎますが、
彼女を呼び、導こうとする亡霊たち(むしろ精霊というべきか)の存在が、
この世に生きる彼女に慰めを与えているように思えます。
マシンガンという殺戮の機械を手にしながら、
古くからの言い伝え「結婚のためには白いオンドリが必要だ」ということを守ろうとして
白いオンドリを探し回る二人。

実はそんなふうに無邪気で純情。
「白いオンドリを探している」というと、周りの人々が吹き出してしまうほどに。
合理性のカタマリである武器と、
言い伝えやおまじないのアンバランス。

こんな自分の力ではどうにもならない世の中だからこそ、
そういうものに人はより一層すがるのかもしれません。


具合の悪いコモナを送ってくれた人、
コモナを家族として受け入れようとするおじさん、
こんな場所でも温かい人々が居て、支えあって生きている。
そして、生まれてくる新しい命。
厳しい現実を描き、訴えるとともに、
希望の光を投げかける
この作品。
秀逸です。

魔女と呼ばれた少女 [DVD]
ラシェル・ムワンザ,セルジュ・カニンダ,アラン・バスティアン,ラルフ・プロスペール
アミューズソフトエンタテインメント


「魔女と呼ばれた少女」
2012年/カナダ/90分
監督・脚本:キム・グエン
出演:ラシェル・ムワンザ、セルジュ・カニンダ、アラン・バスティアン、ラルフ・プロスペール、ミジンガ・グウィンザ

殺伐さと優しさ★★★★★
満足度★★★★★


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