映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「銀花の蔵」遠田潤子

2022年03月22日 | 本(その他)

座敷童のいる醤油蔵で

 

 

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秘密を抱える旧家で育った少女が見つけた、古くて新しい家族のかたち。
大阪万博に沸く日本。
絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花は、
父親の実家に一家で移り住むことになる。
そこは、座敷童が出るという言い伝えの残る由緒ある醬油蔵の家だった。
家族を襲う数々の苦難と一族の秘められた過去に対峙しながら、
少女は大人になっていく―。
圧倒的筆力で描き出す、感動の大河小説。

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遠田潤子さん作品、これまで「白、緑、赤」が題名につく物語を読んできましたが、
今回は「銀」です。

すべての作品の題名に色がついているわけでもありませんが。

 

絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花が、
父の実家に家族で移り住むことになります。
父の実家というのは奈良の由緒ある醤油蔵。
座敷童が出るという話もあります。

ある時、銀花はその、座敷童を目撃するのですが、
そのことを家の人に言うと、そんなはずはないと、皆、怒り始めるのです。
今の父は実の父ではない。
銀花は、母の連れ子だった。
この家で、当主となるものだけが座敷童を見ることができる
という言い伝えのある座敷童を、
血のつながりもない小娘に見えるわけがない、と。

目一杯かわいがってくれて大好きな父が実の父ではないなんて・・・。
その時初めて真実を知った銀花・・・。

 

この家を切り回すことだけに必死な厳しい祖母。
なぜか銀花に敵意を向ける父の年の離れた妹。
どこかふわふわと浮世離れしていて、そして、盗癖のある母。
絵描きへの夢が捨てきれず、家業には全く身の入らない父。
問題山盛りのこの家族の中で、それでも強くまっすぐに銀花は成長していきます。
そして彼女はこの醤油蔵が大好きなのでした。

結局本作の中で、家族となるのは血のつながらない人々ばかりなのです。
最も血縁を重要視しそうなこの旧家で、
血のつながらない人々が身を寄せ合って暮らす。
そして、蔵を受け継いでいく。

座敷童を見ることができるのは、その心がある人。
そういうことでいいですよね。

 

本作、醤油蔵を舞台としたことで、歴史や風土の中で息づく人々の生活が語られていて、
遠田潤子さんらしさを保ちながら、
最も深く読み応えのある作品になっているように思いました。
あ、これまで読んだ中で、ということですが。
(そもそもまだ数冊しか読んでない!)

<図書館蔵書にて>
「銀花の蔵」遠田潤子 新潮社

満足度★★★★.5

 

 



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