世界中が「聖域」以外の場所
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クリスティアン(クレス・バング)は現代アート美術館のチーフキュレーターです。
美術館の次の展示企画として「ザ・スクエア」を準備しています。
美術館前に四角く区切った領域を作り、
ここを「思いやりの聖域」として、誰もが平等な空間であるとします。
他人を思いやる人間としての役割を訴えかけようとするわけです。
そんな頃、クリスティアンはスマホと財布を盗まれてしまいますが、
その犯人に対して愚かしい行動をとってしまいます。
そのことから、クリスティアンはじわじわと困った状況“カオス”へ追いやられていく・・・。
「思いやりの聖域」などと訴えかけるクリスティアンの行動自体が、
エゴ丸出しの醜いものだった・・・そういう皮肉な物語です。
しかしつまりこれは、クリスティアン一人のことではなく、
この格差社会で中・上位にある多くの人々のことを指してもいるわけです。
ブラックユーモア・・・というか、あまりにも苦くて、
私は苦笑いすらもできませんでした。
本作中の「聖域」では、図らずもとんでもない事が起こってしまうのです。
ほんと、笑えない・・・。
あるディナーパーティの会場に現れた“ケモノ”のシーン。
これがまた痛烈でした。
ある特定の人物に絡みつき悪さをしようとする“ケモノ”。
人々はひたすら凍りついたように、自分に被害が及ばないよううつむき黙り込む。
困った人に救いの手を差し伸べようともしないこの世界。
そうか、私が思うに、あのせいぜいが一坪くらいの「ザ・スクエア」が思いやりの聖域だとすれば、
それ以外の地上すべてが聖域ではない、
「思いやりのないカオスの場」ということなんだ・・・。
スウェーデンは福祉大国で、貧富の差など殆どないのかと思っていましたが大間違いだったようです。
つまりしっかりと税金や保険料を払い続けることができた人ならいいけれど、
それができなかった人、ましてやそのレールからはじめから外れている移民などのための
セーフティネットはない、ということか。
なんだかしんどくなってしまう作品なのでした。
<WOWOW視聴にて>
「ザ・スクエア 思いやりの聖域」
2017年/スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク/151分
監督:リューベン・オストルンド
出演:クレス・バング、エリザベス・モマ、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー
辛辣度★★★★★
満足度★★★.5
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