そして、彼女の復讐が始まる
炎の色 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫) | |
平岡 敦 | |
早川書房 |
炎の色 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫) | |
平岡 敦 | |
早川書房 |
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1927年2月、パリ。
一大帝国を築いた実業家の葬儀が粛々と進んでいた。
しかし出棺のとき、思いがけない悲劇が起きる。
故人の孫、七歳のポールが三階の窓から落ちたのだ。
故人の長女マドレーヌは亡父の地位と財産を相続したものの、
息子の看護に追われる日々を送る。
しかし、そのあいだに、彼女を陥れる陰謀が着々と進んでいた…。
ゴンクール賞および英国推理作家協会賞を受賞した『天国でまた会おう』待望の続篇登場! (上)
奸計により、亡父が遺した資産も邸宅も失ったマドレーヌは、
小さいアパルトマンで細々と暮らしていた。
一方、彼女を裏切った者たちは、それぞれ成功への道を歩んでいた。
そして、マドレーヌは復讐することを決意する―。
ヨーロッパでファシズムが台頭しつつある1930年代、
新たな戦争の影がしのびよるパリでくりひろげられる、息もつかせぬ復讐譚。
『その女アレックス』著者による、『天国でまた会おう』三部作の第二巻。(下)
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映画化もされたピエール・ルメートル著「天国でまた会おう」の続編です。
前作で中心人物であったエドゥアールの姉、マドレーヌが主人公。
前作は第一次世界大戦後間もなくの話だったのが、少し時が過ぎて1930年代。
隣国ドイツではヒトラーが独裁体制を固めています。
そんな時代背景も関係しつつ・・・。
まずは冒頭に巻き起こる悲劇。
マドレーヌの父で大銀行家のマルセル・ペリクール氏の葬儀の日。
なんとその棺の上に、3階の窓から飛び降りたマドレーヌの一人息子、ポールが激突。
一命はとりとめましたが、半身不随になってしまいます。
父の遺産を引き継ぎながら、気丈にも障害を持つ息子を守り育てていくマドレーヌ。
しかし、周囲の陰謀により財産を総て失ってしまうのです。
彼女を裏切った者たちはそれぞれに成功を収めている・・・。
これは、どん底に落ちたマドレーヌの復讐の物語。
わくわくします・・・!
一人の女性が、男たちに復讐していくというのがまた、ツボなんですよね。
ひ弱い息子ポールが長じるに連れ、その頭脳と才能を開花させていく様もいいし、
超太っちょの歌姫との交流も楽しい。
何が何でもフランス語を話さず、ポーランド語のみで押し通してしまう
介護人ヴラディの底抜けの明るさにも救われます。
この人がいてくれてよかった~。
そして、そもそもなぜポールが3階の窓から飛び降りたりしたのかという真実は
かなりあとになって明かされるのですが、これが衝撃的。
ますますマドレーヌの復讐心が燃え上がります。
このシリーズは3部作ということなので、もう一作出ることになるのですね。
次はドイツ占領下のパリか、もしくは2次大戦後?
実に楽しみです。
図書館蔵書にて
「炎の色」 ピエール・ルメートル ハヤカワ・ミステリ文庫
満足度★★★★☆
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