偉大な業績の秘話
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初版の発行まで70年を費やしたという、
世界最高峰と称される「オックスフォード英語大辞典」の誕生秘話です。
19世紀イギリス。
貧しい家庭に生まれ、学士号を持たない異端の学者マレー(メル・ギブソン)が、
オックスフォード大学、英語辞典編纂計画の中心人物に指名されます。
シェイクスピアの時代まで遡り、すべての言葉を収録、
その言葉の引用などものせるという壮大なもの。
しかし、そのためにはあまりにも時間も人員も不足していて、さっそく行き詰まるのです。
そんな時、大量の資料を送ってくれる謎の協力者が現れました。
それは、エリートでありながら精神を病み、
殺人を犯して精神病院に収監されている元軍医のマイナー(ショーン・ペン)でした。
マレーとマイナーは辞典作りという果てないロマンを共有し、固い絆で結ばれていきます。
ところが、犯罪者が大英帝国の威信をかけた辞典作りに協力していることが
明るみになり問題に・・・。
本作で驚くのは、その辞書作りの大変さよりも、
こんな曰く付きの人物が編纂に関わっていた、ということです。
マイナー氏は軍医(外科医)ですが、
つまりその戦争での出来事がトラウマとなり、心を煩ったようなのです。
頬に焼き印のある男が自分を殺しに来る、といい、また本人にはその姿が見える。
今で言えば統合失調症ということになります。
そして、彼を襲ってくる男を拳銃で撃ったつもりが、
全く関わりのない一市民を撃ち殺してしまった・・・。
通常であれば、殺人犯は死刑となるところですが、
精神を病んでいることが明らかなので、死刑とはせず、
精神病棟に入れられた、と。
この時代から、こういう考え方があったというのにも、ちょっと驚きました。
マイナー氏は病棟でも、まさに罪人扱いだったのが、
ある事故にあった職員の命を救ったことから、良い待遇を受けるようになります。
そしてさらに、辞書の資料作りに没頭するようになってからは、
精神の状況も良くなるのです。
がしかし、ここの院長が当時の治療法を試み始めると
次第にマイナーは廃人のようになってしまう。
それは治療というより拷問のようなもので・・・。
人の心を救うのはやはり人の心、友愛、ということなのかもしれません。
すごく興味深い作品でした。
メル・ギブソンにショーン・ペン。
配役も豪勢ですしね!
<WOWOW視聴にて>
「博士と狂人」
2019年/イギリス・アイルランド・フランス・アイスランド/124分
監督:P・B・シェムラン
原作:サイモン・ウィンチェスター「博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話」
出演:メル・ギブソン、ショーン・ペン、ナタリー・ドーマー、エディ・マーサン、スティーヴ・クーガン
歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★☆
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