映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

シチリア!シチリア!

2011年07月11日 | 映画(さ行)
シチリアの激動の歴史と家族



             * * * * * * * *

ニュー・シネマ・パラダイスの名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が
自身の生まれ育ったシチリアの村バーリアを舞台とした自伝的作品です。
ですが中心となるのは、彼の父、ペッピーノ。
1930年代~1980年代、シチリアの激動の現代史を背景に、
ペッピーノが幼い子供の頃から晩年を迎えるまでの人生を語っています。



おそらく村中がそうだったと思えるのですが、
トッレヌォヴァ家もまた貧しい暮らしをしています。
子供のペッピーノが雌牛を引き連れて乳を売り歩いたり、
何ヶ月も家を離れて牧場に出稼ぎに出たり。
シチリア版「おしん」・・・。
いえ、でも日本のそれほど湿っぽく重くはなくて、からっと陽性。
そういうところがシチリアの風土を感じさせます。
ある時、ペッピーノはある言い伝えを聞きます。
「山頂にある3つの岩山に一つの石を連続して当てることができたら、
黄金を隠した洞窟の扉が開く」というもの。
何度も試してみるのですが、全くうまくいきません。


ファシストが台頭した二次大戦を経て、やがてアメリカ軍による解放。
若く希望に燃えるペッピーノは、共産党に入党します。
やがてある女性と恋に落ち、結婚。
子供たち、両親、兄という大家族。
政治活動を続けながら、彼が家族を支える中心となっていきます。
シチリアといえば、マフィアとそしてその強い家族の絆を思い浮かべるのですが、
ここにもやはり強い絆があるのでした。
ペッピーノはやがて、イタリア議会の議員に立候補しますが・・・。



終盤、老いたペッピーノは、子供の頃馴染んだあの岩山にたたずみます。
いたずらに、石を一つ放ってみると・・・。


このラストのエピソードにはいろいろと考えさせられます。
いろいろな喜びや悲しみを乗り越えながら、
彼は信念を貫き、そして家族も守り通した。
それは社会的に名をあげたとか成功したとかいうことではないかもしれないけれど、
素晴らしい人生だった。
彼の人生が祝福されたように私には思えます。
けれど、その祝福された人生であっても、いつか終焉が来る・・・。
数十年の長い人生も、振り返れば夢のよう。
故郷を、そして家族を、
懐かしみ愛してやまない監督の情感あふれる良作です。


トルナトーレ監督はこのペッピーノの次男に当たりましょうか。
父に連れられて初めて映画館に入ったシーン、
そしてその後どんどん映画好きになっていくシーンなどが挿入されていて、
これもなかなか楽しい。

シチリア!シチリア!
2009年/イタリア/151分
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:フランチェスコ・シャンナ、マルガレット・マデ、アンヘラ・モリーナ、リナ・サストリ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿