“人権”という言葉の重み
* * * * * * * * * *
この度の第86回アカデミー作品賞受賞作。
ということで、通常ならガラガラと思える向きの作品ですが、
さすがに、ほぼ満席となっていました。
本作は実話を記録した本「12Years a Slave」が1853年に出版され、
ベストセラーとなったそうです。
リンカーンの奴隷解放宣言が1863年のことですから、
この本は奴隷制度廃止の大きな後押しになったものと思われます。
1841年。
奴隷制度廃止前です。
ソロモン・ノーサップはニューヨーク州サラトガで
自由証明書によって認められた自由黒人として、
妻子とともに不自由ない生活を送っていました。
ところが悪い白人に嵌められ、南部の農園に奴隷として売られてしまったのです。
それから12年、彼は壮絶な奴隷生活を体験することとなる・・・。
奴隷ではない、“自由黒人”を主人公に据えたことで、
ある日突然、衣服も身分も、そして名前までも取り上げられ、
奴隷になってしまうことの理不尽さを私達に強く共感させることに成功しています。
人は一皮むけば皆同じ。
ソロモンの自由を保証していたのは
結局のところ「自由証明書」というたった一枚の紙切れ。
それがなければ、彼がこれまでに得た知識や学問は
逆に彼の立場をより悪くする凶器にもなりかねない。
奴隷というのはお金で売り買いするものなので、
彼を自由にするということは、買ったお金をまるまる損することと同じ。
だから、本当はソロモンの身の上を薄々感づいている農場主たちも、
知らないふりを決め込むという構図です。
人を買う、ということはこういうことなのか。
そしてそれは主人の所有物であるから、
どのように痛めつけようと、死に至らしめようと、罪にはならない。
本作のようにサディスティックな農場主の元では、
ひたすら主人に逆らわず隷属するしかない。
また性的に陵辱を加えられる女性奴隷についても、
語る言葉をもてないくらいに憤りを感じてしまいます。
“人権”という言葉の重さ、大切さを今更ながら痛感しました。
このような作品はこれまでも多々あったわけですが、
本作は、これでもかという風に現実を突きつける力を持つ
稀有な作品の一つといっていいと思います。
ストーリーとしては一応ハッピー・エンドなわけですが、
ちっとも心は晴れず、重苦しいままの終演となりました。
確かにソロモンにとっては悪夢の終わりではありましたが、
他の大多数の黒人奴隷たちはそのままだったわけですから・・・。
それでも夜は明ける・・・?
奴隷制度が廃止となっても長く差別は続き、
ようやく“夜明け”を感じられるようになったのは、つい最近ではないでしょうか。
近年アカデミー賞で取り上げられるのに、
このような黒人差別を扱った作品が多いですね。
アメリカが「良心」を対外的にアピールしているというのが、
やや鼻につかなくもないのですが、でもないよりまし。
そう思うことにします。
2013年/アメリカ・イギリス/134分
監督:スティーブ・マックイーン
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ルピタ・ニョンゴ、ブラッド・ピット
歴史発掘度★★★★☆
メッセージ性★★★★★
満足度★★★★☆
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この度の第86回アカデミー作品賞受賞作。
ということで、通常ならガラガラと思える向きの作品ですが、
さすがに、ほぼ満席となっていました。
本作は実話を記録した本「12Years a Slave」が1853年に出版され、
ベストセラーとなったそうです。
リンカーンの奴隷解放宣言が1863年のことですから、
この本は奴隷制度廃止の大きな後押しになったものと思われます。
1841年。
奴隷制度廃止前です。
ソロモン・ノーサップはニューヨーク州サラトガで
自由証明書によって認められた自由黒人として、
妻子とともに不自由ない生活を送っていました。
ところが悪い白人に嵌められ、南部の農園に奴隷として売られてしまったのです。
それから12年、彼は壮絶な奴隷生活を体験することとなる・・・。
奴隷ではない、“自由黒人”を主人公に据えたことで、
ある日突然、衣服も身分も、そして名前までも取り上げられ、
奴隷になってしまうことの理不尽さを私達に強く共感させることに成功しています。
人は一皮むけば皆同じ。
ソロモンの自由を保証していたのは
結局のところ「自由証明書」というたった一枚の紙切れ。
それがなければ、彼がこれまでに得た知識や学問は
逆に彼の立場をより悪くする凶器にもなりかねない。
奴隷というのはお金で売り買いするものなので、
彼を自由にするということは、買ったお金をまるまる損することと同じ。
だから、本当はソロモンの身の上を薄々感づいている農場主たちも、
知らないふりを決め込むという構図です。
人を買う、ということはこういうことなのか。
そしてそれは主人の所有物であるから、
どのように痛めつけようと、死に至らしめようと、罪にはならない。
本作のようにサディスティックな農場主の元では、
ひたすら主人に逆らわず隷属するしかない。
また性的に陵辱を加えられる女性奴隷についても、
語る言葉をもてないくらいに憤りを感じてしまいます。
“人権”という言葉の重さ、大切さを今更ながら痛感しました。
このような作品はこれまでも多々あったわけですが、
本作は、これでもかという風に現実を突きつける力を持つ
稀有な作品の一つといっていいと思います。
ストーリーとしては一応ハッピー・エンドなわけですが、
ちっとも心は晴れず、重苦しいままの終演となりました。
確かにソロモンにとっては悪夢の終わりではありましたが、
他の大多数の黒人奴隷たちはそのままだったわけですから・・・。
それでも夜は明ける・・・?
奴隷制度が廃止となっても長く差別は続き、
ようやく“夜明け”を感じられるようになったのは、つい最近ではないでしょうか。
近年アカデミー賞で取り上げられるのに、
このような黒人差別を扱った作品が多いですね。
アメリカが「良心」を対外的にアピールしているというのが、
やや鼻につかなくもないのですが、でもないよりまし。
そう思うことにします。
2013年/アメリカ・イギリス/134分
監督:スティーブ・マックイーン
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ルピタ・ニョンゴ、ブラッド・ピット
歴史発掘度★★★★☆
メッセージ性★★★★★
満足度★★★★☆
主語をはっきりさせなくてもよい日本語ならではのタイトルです。
原題のままでも良かったかもしれません。
エップスの農場を去るときのソロモン、彼を見送る奴隷たち。
それもまた事実であったのでしょうかねぇ。
ソロモンは12年間でしたが、黒人奴隷たちは生まれてから死ぬまでずっと奴隷のままだったわけで、全く理不尽な話です。等の奴隷たちにはそれを書き残し世間に訴える「文字」を持っていなかっただけなんですよね。