映画と本の『たんぽぽ館』

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共喰い

2014年04月30日 | 映画(た行)
自分の中に流れる“血”を忌み嫌うとき



* * * * * * * * * *


第146回芥川賞を受賞した同名田中慎弥作品の映画化です。


昭和63年夏、山口県下関市。
高校生遠馬は暴力的性癖を持つ父親(光石研)と
その愛人(篠原友希子)と暮らしています。
母(田中裕子)は近所に住んでいますが、
女癖が悪く性行為で暴力をふるう夫に愛想を尽かし、家を出たのです。
遠馬は、粗野な父を忌み嫌っていましたが、
恋人千種(木下美咲)と交わるうちに、
自分の中に父と同じ血が流れていることを自覚させられます。



男の暴力に忍従する女。
遠馬はそういう父の愛人たちを不思議に思う。
なぜさっさと逃げ出さないのか。
男と女のどうにもならないしがらみが根底にあるのでしょう。
男の性衝動・・・う~ん、そこのところは私にもよくわからないのですが。
「愛」だの「ロマン」だのの言葉が滑稽に思えてしまう、
生と性の生々しいストーリーです。



田中裕子演じる“母”の凄みが効いていました。
彼女の中にあるのは諦めと怨嗟。
そういうものを胸奥に秘めながらも、人は日常を生きなければならない。
あの父にしても、夜あのように変貌するのだけれど、
何食わぬ顔で社会に溶け込んで
嬉々として祭りの準備に励んでいたりする。
世の中というのが、ちょっと恐ろしく感じられてきます。



さて、本作は原作とあえて改変しているところがあるそうです。
(原作、読んでいませんが・・・)
終盤の半年後のエピソードは原作にはないものだそうで。
それによって、多少は物語の上にも光が差し込む気がするわけですが、
確かにこれは無くても成り立つものですね。
その先は私達の心に任せてくれたほうが、余韻は残ったかと思います。



昭和最後の夏というところにも意味がありまして、
でも最後の母のセリフがちょっと唐突に感じました。
あ、そういうテーマも含んでいたわけね、と、
そんなところで初めて気付かされても戸惑ってしまう。
小説中には前振りがあったのでしょうか? 
少なくともこの作品中では余分に感じられます。

共喰い [DVD]
菅田将暉,木下美咲,篠原ゆき子,光石研,田中裕子
アミューズソフトエンタテインメント


「共喰い」
2013年/日本/102分
監督:青山真治
原作:田中慎弥
出演:菅田将暉、木下美咲、篠原友希子、光石研、田中裕子
生々しさ★★★★☆
満足度★★★☆☆


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