作家が見た東京會舘
東京會舘とわたし 下 新館 (文春文庫) | |
辻村 深月 | |
文藝春秋 |
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井上靖、三島由紀夫らの小説でも描かれ、
コーちゃんこと越路吹雪は多忙ながら東京會舘でのショーには永く出演した。
七〇年代はじめに改装。
平成では東日本大震災の夜、帰宅できない人々を受け入れ、
その翌年には万感の思いで直木賞の受賞会見に臨む作家がいた。
そして新元号の年、三代目の新本館が竣工する。
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さて、下巻第6章は昭和51年から。
東京會舘は建て替えられて昭和46年に新館がオープンしています。
芽衣子は本来なら今年金婚式を迎えるはずだった夫を2年前に亡くしています。
夫と何度も行った思い出のある東京會舘で、お茶の教室関係者の集まりがあるというので
初めての新館へ出かけることに。
そこで芽衣子は、思いがけず、懐かしい旧館の片鱗と出会うことになるのです。
新しいけれども、歴史も大事に継承されている、
そしてまた、従業員のホスピタリティーも・・・。
私、不覚にも本章の最後の部分で泣けてしまいました。
ここの従業員のあまりにも心のこもったおもてなし・・・。
素晴らしい・・・。
第7章では、恒例として毎年ディナーショーを行っていた越路吹雪さんのエピソード。
第8章は平成23年3月11日。
あの東日本大震災の日の、実話に基づくエピソード。
そして第9章は、これも恒例、東京會舘で芥川賞、直木賞の受賞インタビューと授賞式が行われていることに絡めた、
ある小説家のストーリーです。
これは著者の実体験が相当反映されていそうで、すごく興味深いのです。
つまりはこのことがあったからこそ、著者はこのストーリーを書こうと思ったのでしょうね。
平成31年1月に、3代目の東京會舘新館(新新館というべきか?)がオープン。
ここのところはこの文庫のために新章が書き加えられているのですが、
ここでもまた、歴史が受け継がれていることがわかります。
私、下巻のほうがさすがに自分が生きていた時代のことなので身近で、興味深く感じられました。
「東京會舘とわたし 下」辻村深月 文春文庫
満足度★★★★★
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