ブラックパンサー党のユダ
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1960年代後半~70年代、アメリカで急進的な黒人解放運動を展開した政治組織
ブラックパンサー党の指導者、フレッド・ハンプトンが暗殺されるまでの実話を元にした作品です。
窃盗犯のウィリアム・オニール(ラキース・スタンフィールド)は、
刑を猶予する代わりにFBIの情報提供者にならないかと、話を持ちかけられます。
その話に応じて、ブラックパンサー党のイリノイ支部に潜入したオニール。
FBIは、革命を提唱する党の指導者フレッド・ハンプトン(ダニエル・カルーヤ)を
危険因子とみなしているのです。
オニールはブラックパンサー党とFBIの間を巧みに立ち回りますが、
次第に心の内に葛藤が芽生えてきます・・・。
アメリカの公民権運動が静まったころでしょうか。
しかしそれでもほとんど変わらない黒人差別に業を煮やしたのかも知れませんね。
資本家に対して武力を行使しても、自分たちの生活を向上させようと目指すブラックパンサー党。
言っていることは確かに過激なのですが、
貧困層の児童に食事を給したり、治療費が無料の病院を建てたり、
白人の貧困層組織と共闘したり、
見るべき所のある活動もしています。
オニールは特別な思想があったわけではないのですが、
党の一員として過ごすうちに、その思想に共感し、
また、党のメンバーとも気心が知れていくうちに、
情報をFBIに流すことにためらいを覚えるようになっていきます。
中でも皆のリーダーであるハンプトンの思想・指導力・行動力に
傾倒していくのは当然のことにも思えます。
そして、もう密告は止めたいと思うようになるのですが、
恐ろしいのは対するFBIの方。
やめるなら服役してもらう、というのはまあ当然だとして、
しまいには「仲間にバラす」と脅しをかけてきます。
以前、内通者がバレて拷問の末殺されていたのです。
ところが実はそれはFBIがしかけたフェイクの内通者。
本物の内通者は無事で、全く無関係の男が殺されてしまった・・・
というのがまた、余計に恐い。
そんなことで、尊敬し大切に思っている人物を裏切り、
結果として死にまで至らしめてしまったという
「ユダ」と同様の役割をオニールは担ってしまうわけですね。
苦いです・・・。
それにしても、FBIのやり口の汚さよ・・・。
時の権力は、どこの国でも、国の内外でも、
イヤラシイやり方で自己保身しようとするものですね・・・。
<WOWOW視聴にて>
「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」
2021年/アメリカ/125分
監督:シャカ・キング
出演:ダニエル・カルーヤ、ラキース・スタンフィールド、ジェシー・プレモンス、ドミニク・フィッシュバック
緊迫感★★★★☆
裏切り度★★★★★
満足度★★★.5
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